崩壊する部屋

月曜の夜のこと。
寝ていたら物音がした。


ミシッ ミシッ ミシッ 


泥棒・・・
忍び込むんだ、こんな部屋に・・・


しかし、何かがおかしい。
そっと足音を立てずに歩いているようには思えない。
一定の間隔で何かが軋んでいるような。


目を開けて、暗闇。枕もとの明かりをつける。
相変わらず、ミシッ、ミシッと音がしている。
深呼吸をして、恐る恐るハシゴを下りていく。


誰もいない。
隠れているのか? とドアの方までそっと。
やはり、誰もいない。


なんなのだろう?
どうも机から音がしているように思う。
手を触れる。


ハシゴを上ってロフトへ。
明かりを消そうとしたら、それまでとは違う、少し大きめの音が。
そして何かがずり落ちる音。
這って行く。下りる。
机の上に積み上げた CD の山がおかしな角度で崩れている。
何が起きたんだ・・・?


幽霊・・・? 
ポルターガイスト・・・? 


そう思った瞬間、怖くなる。
ハシゴを上るとき、
誰かに足首を掴まれるんじゃないか・・・


横たわっても怖くてしばらくの間眠れない。


音は、しなくなった。

    • -

翌朝(火曜の朝)、目覚ましが鳴って起き上がる。
下りていく。


いつものようにテレビをつける。PC の電源を入れる。


・・・何かがおかしい。


昨日と違う。
机の上の本棚と細長い CD ラックが右に大きく傾いている。
どうしてだろう?


モニターも傾いている。
・・・あ、机自体が右に傾いてるんだ。


しゃがみこんで机の下を覗き込む。
スチールの脚が、飴のようにクシャッと曲がっている。
ボキッと折れたのではなく。


経年劣化ってやつと机の上に山と積み上げた本の重みと。
そこに何かしらのきっかけが加わって、こうなった。


来るべきときが来た、と思う。
いつかこんなふうになるとは予想していた。
学生時代から使っていた冷蔵庫か洗濯機が壊れる。
しかし、まさか机だったとは。


何が厄介かと言えば、机を買い換えるというお金の問題ではない。
これまで何度も書いてきたように、
元々狭い部屋に物を置き過ぎてて、CD ラックを無理やり立てていたりして、
テレビやビデオの台などもどかさなきゃいけなくて、
そしてそれらを代わりに置く場所がなくて、とてつもなく面倒だということ。
果たして、それは一人で可能なのだろうか・・・?


取り急ぎ傾いている机を何とかしなきゃいけなく、
会社の帰りに新宿のハンズに寄って脚の下にかませるものを買う。
材料のコーナーへ。
最初、アルミの合金の板を買おうとしたら厚さ 2cm ぐらいので 7000円ぐらいした。
だったら新しい机を買ったほうがいい。
木材だとそれなりに安かったので、迷わずそちらへ。
厚さ 1.5cm ぐらいので縦・横同じサイズのを2枚買う。1枚500円ぐらいか。
1枚でもよかったが、もしかしたら足りないかもと。だったら同じほうがいい。
ハンパな木切れだと安かったが、サイズや厚みが揃わない。


帰って来て、取り掛かる。
机の上のものをどかして、どかすために床の上のものをどかして、
などとしていたらそれだけで1時間以上掛かってしまった。
こんなことならもっと前に
机の上の本を整理してトランクルームにもっていけばよかった。
山積みの新聞も小まめに読んで捨てればよかった。
後悔先に立たず。
引き出しの中の書類やガラクタの山もいったん袋に移し、
さっき床の上に置いた本の山をさらに奥へと押して場所を作る。
まるで往年のゲーム、「倉庫番」のよう。
椅子なんてロフトに放り上げた。


準備が整った。
しかし、いざ机の脚に板を2枚かましてみたら、・・・
高さが全然足りなかった。しかも、前後の脚に届かず、前しかかませない。
しまった。会社行く前に冷静になってちゃんと測っておけばよかった。
このままほっとくわけにもいかないし、明日また追加で買いに行かないといけない。
編集学校系の作業が立て込んでて空いてる時間の全て取られるぐらいの勢いなのに。
こんなことしてる場合じゃないのに・・・


あちこちに片付けた本の山をそのままにして、その日を過ごす。
ふて寝。

    • -

昨日の夜、帰りにまたハンズへ。
同じ厚さで異なるサイズの板を組み合わせて買う。
戻ってきて、さっそく脚の下へ。
だいたいのところ高さは合うようだ。微妙に右が下。惜しい。


まあいいかと思って使い始める。
このままいくとまた少しずつ、右に傾いていくんだろうな。
やはりどこかで机は買い換えなければ。
しかし、部屋の荷物を全て外に出すぐらいの覚悟というか作業量が必要。
もはや引越しに近い。
あと、どれぐらいもつだろう?


怖い。怖くてたまらない。