青森行き、夜行バス

こんなニュースを見かける。
「競争激化の夜行バスに新サービス続々
 豪華カプセル式シートや東京−大阪間500円も」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100912-00000001-sh_mon-bus_all


東京−大阪間の場合、片道わずか500円という「限定ワンコインシート」
が提供されているのだそうな。


夜行バスって言うと『水曜どうでしょう』のサイコロの旅が
何よりもまず思い出されますが。


学生時代、青森に帰るときは必ず夜行バスだった。
東京駅からの「ラフォーレ号」
片道1万円だったか。
夏休みや年末など、帰省する時期になると母が手紙でチケットを送って来る。
僕ではなく、母が出していた。
なので、眠りの浅い僕は夜行バスだと全然眠れないんだけど、
文句は言えない。


年末に乗って帰るとたいがい後ろの方の座席では
(なぜかいつも決まって最後尾だった)
ワンカップ大関の類を飲んで、ペチャクチャと小声で話して、
ヘッドホンで大きな音で演歌を聴いている。
時々何かの弾みでその演歌の音が漏れ聞こえる。
聞いたまま眠り続けて、朝までその音が小さく聞こえていたこともある。
文句を言いたくもなるが、言えない。
出稼ぎのおどっちゃ(オヤジ)が正月に家族の顔を見に帰るところなのだから。
眠れない大学生の僕は人生というものを考える。


今はもう乗ることはなくなった。
今も出稼ぎの人たちが乗っているのだろうか。


乗ってるのは、当時の僕のように金のない若い子も多かった。
働いているのか、学生なのか。
青森駅を出たばかりの頃は携帯で津軽弁で話すのに、
東京に近付くと標準語になっている。
旅行で青森に来ています、って感じの人は少なかった。
今はどうか分からないけど、バックパッカーな外国人を見た記憶もない。
青森に住む人の、かつて青森に住んでいた人のための足。


21時に出発して、朝は6時半に青森に着く。
窓の外の暗くなった東京の風景を眺めて、本を読んで、眠れずに過ごす。
いつのまにか眠っていて、いつのまにか青森へ。
夏はいいけど、冬ともなると天候が悪いと雪で高速道路の流れが悪く、
なかなか時間通りに着かない。
数十分の遅れは当たり前で
一番大変だったときは着いたのが昼前ってこともあった。
乾パンをもらったことがあったような気がする。


懐かしいな。
でも、乗りたいとは思わない。
でなきゃ僕は何のために10何年も東京で働いてきたのか。
働き続けたのか。
そんなことを思う。