『77 BOADRUM』

土曜の夜、『77 BOADRUM』を観た。
Boredomsが2007年7月7日、ニューヨークのブルックリン橋の下の公園で
77台のドラムと77人のドラマーを集めて行ったフリーコンサートを収録した映画。
Boredomsサイドとしては、EYヨはCD-Jやミキシングだったり、
進行を司る槍を振りかざしたり(赤の槍だと自由に演奏しろだったか)、
DMBQの増子真二作成のギターネックを7本つなげたオブジェを荒々しく奏でたり。
その周りを YOSHIMI, YO2RO, 千住宗臣 が取り囲む。
他の参加者の所属するバンドとしては、インタビューの字幕を見ていたら
Lightning bolt, 不失者, Gang Gang Dance, God Is My Co-Pilot,
No Neck Blues Band, John Zorn, Laurie Anderson, The Red Krayola など。
David Grubbs なんて謙虚にも「The Red Krayola というグループのドラマーだ。
普段はギターを弾いているが」などと答えている。
なぜか、Andrew W.K. も加わっている。
3000人近い応募者の中からこの77人が選ばれたとのこと。
(ちなみにEYヨはカウントされていない)


演奏は全くのフリー・インプロヴィゼーションだったかというとそんなことはなく、
曲の骨格・更生は予め決められていたようだ。
なので起承転結がはっきりしている。
さざなみのように始まって、シンプルなリズムを全員で叩いて、
CD-Jからの音が加わって神秘性・トライバル性が増して、
クライマックスの大津波のような展開へ。
そしてまたさざなみへと戻っていく。
これは事前にリハーサルがあって、前日・前々日と
No Neck Blues Band が長いこと使っていたブルックリンの古いスタジオにて
ドラム11台を押し込んで”ドラムリーダー”11名を集めてなされた。


素直に、こういうことをやっちゃうBoredomsってすげーなーと思う。
日本というか世界にもないよね。発想と反射神経の筋肉が違う。いや、本能か。


結成当時の80年代後半から90年代まではまだ、
ヴォーカル・ギター・ベース・ドラム+αという
通常のバンド編成でスカム・ジャンク・ノイズな音を追求していた。
それが2001辺りを境に、V∞REDOMSとしてドラムが3台とEYヨのDJというスタイルへ。
より直接的に肉体と本能を極限まで追い求める音になった。
生命体としての音楽。鼓動の高まりと単純な音のかけらがあればよい。
弦楽器はメロディーを奏でるという知性がモタモタさせるのか、振り捨てられた。
(僕は新宿の今は無きLiquid Roomにて、
 山本精一、ヒラ、ATRの在籍した90年代黄金期のラインナップと、
 フジロックでまだ試行錯誤中のV∞REDOMSと両方見ている)


その音楽的変遷・進化の頂点がこの「77 BOADRUM」となるだろう。
これは東京ドームで1000人のドラマーを集めたら
もっとすごいことになるかというとそんなわけはなくて、
2007年7月7日の77台のドラムというある種の呪術的符合や
ブルックリンという土地柄がなせるわざだろう。


2010年代に入って、Boredomsも次の局面に進むときが来ている。
去年の頭に『Super Roots 10』が発表されたけど純然たる新曲は1曲のみ、
実験活動の定点観測的な意味合いの強い『Super Roots』シリーズじゃない、
ちゃんとタイトルのついたアルバムは
2005年の『Seadrum / House Of Sun』以来音沙汰なし。
そろそろすごいものが出てきてもいいんじゃないか・・・