手術で入院 その3(11/22)

11/22(月)


22時消灯ですぐ寝付いたものの、最初に目を覚ましたのが午前3時。
その後1時間おきに目を覚ます。
廊下の奥からうめき声が聞こえる。見回りをする看護婦の足音。
様々な機械の発する音が一定のリズムを刻む。夢うつつ。
隣のカーテンで何かがベッドの上から落ちて、ガッシャーンと大きな音を立てて目を覚ます。
しかし誰も気付いてないのか、病室に看護婦は来ない。


午前6時に起こされて、検温。36.2℃
(昨日計ったときは36.8℃ 病室の暑さによるものだろう)


排便の座薬を2つ入れる。
歯を磨く。髭を剃る。手術前であるため、朝食はなし。水分の摂取も不可。
時間が開いて、課題に取り組む。
えきねっと」で12月29日の午前中、新青森行きの新幹線を申し込む。
今回から乗り換えなし。


9時前。小便を済ませ、ウォシュレットで洗い、待機する。
9時になって看護婦の方に付き添われてエレベーターに乗り、3階の手術室へ。
このフロアは手術室だけのようで、生活感が全くない。機能性だけ。
ライムグリーンの壁には何かが貼られることもなく、通路は純粋に通路でしかない。
中央手術室の大きな両開きのドアはストレッチャーに乗ったときのようで、
歩いてきたときには横の通用口みたいなのをくぐって中に入る。
右側に受付が、左側に更衣室がある。ここで手術着に着替える。
青の割烹着のようなもの。
頭には髪をぬらさないようにするときの透明なキャップをかぶる。
ベンチに座って順番が来るのを待つ。
担当の看護婦の方が寒くないようにと両肩にタオルをかけてくれる。
ここでいったん別れる。手術のあと、迎えに来てくれる。
関係者以外立ち入り禁止のドアの向こうからリフトが上下する大きな音が聞こえる。
それがなんだか不気味で、デビッド・リンチ的だった。


中央手術室の看護婦に呼ばれる。
受付で左手首のリストバンドにバーコードリーダを当てる。
奥のドアを開ける。薄暗い通路を歩く。
しかし寒くないようにという配慮なのか、時々生暖かい風がどこかしらから流れてくる。
窓の向こうに病院の敷地内の別の建物が見えた。


小さな手術室の一つに入る。もう1人別な看護婦が準備を行っていた。
手術台に仰向けになって横たわる。テレビドラマでよく見るような
円形に丸いライトが6つか8つ連なってその真ん中に同じ大きさのライトが1つ、
というのが天井からぶら下がっていた。
手術はまだ始っていなかったため、暗いままになっている。
左腕に生理食塩水の点滴。右腕で血圧を測る。
右手人差指に洗濯挟みみたいなのをはさんで、何かを計測する。


右を下にして丸くなる。
麻酔科の担当看護婦が頚椎麻酔を行う。
腰の辺りの背骨がチクッとする。麻酔が広がる。
歯を抜くときのあの冷ややかで有無を言わさない感じ。


終わってうつ伏せになる。
鉗子を当てられて、腕の先だったか、冷たいですか? と聞かれる。
それが腰のほうに当てられ、恐らく下半身のあちこちを触っているのだろうけど、
感覚が全くない。当てられているのかどうかすら分からない。


しばらく待つ。隣の部屋で同じく痔に関係する手術が行われていたようで、
「終わりました。大きいのが取れましたよ」と聞こえる。
今回手術をお願いする先生の声。1日に続けて何件も行うようだ。
僕はそのうち2件目となる。


先生はその後すぐ僕の部屋に入ってきて、早速手術を始める。
なんとなく肛門が広げられているんだろうなあと感じる。
これ感じますか? こちらは? と聞かれて両方感覚なし。
そこから先、手術が進められていったようなんだけど何が起きているのか全く分からず。
外来で診察を受けたときのように
仰向けになって両足を上にして抱えるような姿勢で固定して
手術をするものだとばかり思っていた。
だとしたら手術の一部始終が見えるなあなんて考えていたが、うつ伏せだと何も見えず。
気配(ああ、なんかをキリキリと伸ばしているなあ、チョキチョキ切ってるなあ)と
先生の声(「狭くなってるね」「奥のほうにあるなあ」「広げたほうがいいね」)
だけで状況を判断する。
問題なく進んでいるんだろうけど、どこまで来たのか、いつ終わるのか分からず。
振動が加えられたり、押し広げられたり。
ああ、今、摘出されてるんだろうなあ…
「ひー」と思うが、ちょうどよく、一定感覚で血圧を測っていたのが
右腕をギューッと締め付けだすと少しは気がまぎれる。
少なくとも物事は周期的に理路整然と進んでいるようで。


突然、「はい、終わりました」との先生の声があって、あっけなく手術は終了。
簡単に手術の説明を受ける。
恐らく先生は3人目の手術にそのまま向かうのだろう。
僕はストレッチャーに乗せられたまま、運ばれていく。
せーのと仰向けに戻され目の前を無機的な白い天井が流れていく。
生まれて初めての光景。
入口にて、中央手術室のストレッチャーから自分の病室のベッドに移される。
平らな台のようなものがせり上がって、仰向けに寝る僕が狭い隙間をスライドし、ベッドへ。


病室に戻る。
10時。体温や血圧を測る。異常なし。
そのまま眠る。音楽を聴いてよいということで聴きながら眠る。
心に優しい音楽。eels や The Innocence Mission など。
聴いているうちに記憶がなくなって、寝たり覚めたり。
足は麻酔が効いていて、まだ痺れている。