手術で入院 その6(11/24)

6時前に看護婦さんの足音で目が覚める。
ノートPCや医療器具の載ったカートを常に押しながら移動している。
うつらうつらする。
4日目ともなると、いろんなことがわかってくる。
病室の他の人たちの症状なども。
今日から透析を受けるだとか、小腸を切開するとか。
初日にガイダンスを受けた看護婦の方は早口でつっけんどんな印象を受けていたが、
実はベテランで長期の患者さんからの信頼が厚く、頼られているということ。


歯を磨く。
『ハーフ・ザ・スカイ』を読み終える。

昨日の頭痛とめまいが再発。
薬を飲んだのは昨晩の食事のときだったので、薬ではなかったようだ。
環境の違いなのか、手術の疲れなのか、何か状況がよくないことのアラートなのか。
PCを立ち上げる気にも、本を読む気にもならず。音楽を聴いて過ごす。


朝、(お粥ではなく)ごはん、鮭塩焼きと大根おろし、柴漬け、
ふりかけ、牛乳、お茶。


食後再度歯を磨き(他にすることがない)、排便。痛みはないが、血が混じっている。
前日は茶色だった浸出液も鮮血とまではいかないが、ガーゼは薄い赤・ピンク色へ。
しかし毎朝の医師の診断を受けると肛門を押し広げて順調ですと。
そういうものなのか。取り除けたガーゼを見てもなんとも思われない。


診察を受けたのは9時半。10時までパジャマのまま、ベッドで寝ている。
相変わらず頭がズキズキと痛んで何もする気になれない。
Magazineのベストを聴く。心に染みる。
真っ白な天井の一定のパターンで繰り返される模様をぼんやりと眺める。
最後の曲は「Parade」のライブ。これまでに何度聞いたことだろう。
”Sometimes I forget, we're supposed to be in love,
 Sometimes I forget my position.
 Sometimes I forget, we're supposed to be in love,
 Sometimes I forget my position...
 And my position is between a waitress and her table.
 But her service is very, very good...”


10時になって身の回りの物を片付けて、履いてたサンダルなんかもゴミ箱に片付けて、
いつでも病室を退出できるようにする。
看護婦の方が来て、2週間分の薬を手渡す。
10時半に会計の準備ができるのでそれまで待っていてくださいと言われる。
あと、忘れ物がないかチェックしますと。


着替えて、待つ。ベッドの上で寝て過ごす。
いろんな物音を聞く。
隣のベッドの方(どうも僕と同年代のようだ)は
医者と看護婦2人がかりでなんらかの特殊な器具を取り付けている。
斜め向かいの方は医師の診断書を会社向けにどのように書いてもらいたいか、相談している。
隣の隣の病室のおばあちゃんは認知症なのか、「お昼ごはんはまだ!」と言われている。
(このおばあちゃんは用もないのに何度もナースコールを呼ぶようで、嫌がられていた)


11時をだいぶ回って、看護婦の方が現れて忘れ物のチェック。特に問題なし。
何があるわけでもなく、あっさりと「じゃあどうぞ」って感じで終わり。
ナースステーションを通り過ぎる。やはり何があるわけでもない。
みな、電話を取ったりカルテに記入したり打ち合わせしたり、忙しそうだ。
僕も黙って通り過ぎる。


1階で支払いをする。手続きはすぐ終わる。約\56,000だった。意外と掛からなかった。
2階のコンビニで油紙を買って、外に出た。


11時半。まっすぐ帰るつもりだったのが、昼の薬を飲む時間に近かった。
だったら何か食べて帰ろう、そうだ、コリアンタウンに昔よく行ったお粥屋があったなあ。
重いボストンバッグを抱えて歩いていく。
しかし、行ってみたら定休日。途中見つけた店に入る。
辛いものは避けようと海鮮チヂミにしたら
サクサクふんわりホットケーキ系のチヂミではなく、油でジュワーッとさせたチヂミだった。
大失敗。退院してすぐにこういうの食べられない。しかも、付けあわせでキムチ。
残すべきだったんだけど、出されたものを全部食べないことには気がすまない僕は
なんとか平らげた。半分までこないうちに体が拒否していた。


案の定、東新宿から新宿三丁目まで歩いていくうちに具合が悪くなって、
丸の内線に乗っているときには脂汗が出てきていてもたってもいられなくなった。
吐き気がないのでよかったものの。心の底から後悔する。
外食するなら蕎麦程度に、正しくは帰ってきてからバナナやトマトにしておくべきだったのだ。
昼食時、様々な店の前を通って、脂ぎったゴッテリした食事がいかに多いかということに気付く。


歩き続けるうちにさらに腹の調子まで悪くなってきて。
どうにかこうにか部屋に辿り着いて、まずは排便。いくつか血の塊が混ざっていた。
これは明日また病院に行くべきか。様子を見る。


1時間ほど寝るて、14時半。さて何をしようか。
めまいと頭痛は多少治まった。
図書館と床屋に行くことにする。
平日の床屋は客なしですぐ切ってもらえる。
痔で退院してきたばかりと話すと、そこからあれこれとお客さんとしてくる医者の話に。
聞いてるうちにまためまいと頭痛と脂汗。じっと座ってるとよくないようだ。
顔を剃っているとなんてことない。
ああ、こりゃいかんと思う。
明日出社できるような気がしない。地下鉄で苦しんで、出社しても仕事にならない。


終わって図書館へ、そして西友へ。
歩いている分には問題なし。むしろ気分が良くなってくる。
帰って来て荷物を片付けて、母に電話。
この日締め切りの課題があったが、申し訳ありません、今日は無理ですと連絡のメールを入れる。
会社にも明日休むと一方を入れる。
例の作業の方今日・明日と集まりがあったことをメールを読んで知ったが、
それもごめんなさいと電話をかける。
また眠る。


20時頃母から電話が掛かってきて、起こされる。
リンゴを送るかという。リンゴジュースも送ってもらう。
あれこれ痔の注意事項を言われるが、
入院時に医者や看護婦にも聞かされたことだったので「もういい」と遮る。


風呂を沸かして入る。
ガーゼを付け替える。
夕食。明治のヨーグルトの大きいやつとバナナ一本。
ガーゼに油紙を当ててサージカルテープで固定する、というのを何本か作っておく。
George Thorogood の82年のライブと、Caranation「Booby」を聴く。


気がつくと23時半になっている。眠る。