手術で入院 その8(11/26)

書き忘れたことで思い出したこと、いくつか。


手術室ではとても小さな、くぐもった音でミスチルがかかっていた。
なんて曲なのかは分からない。
でも曲の様子と声から「ああ、ミスチルが流れてるな」と思いながら
うつ伏せになって手術台に横たわっていた。


肛門内のポリープ摘出跡は自然に解ける糸で縫合されたという。
この「自然に解ける糸」は個人的にノーベル医学賞に該当すると思う。
抜糸の痛みや煩わしさから解放された人が世界中に数多くいるのだから。
ほんとなら僕も抜糸の日まで入院していなければならなかっただろう。


退院の日、9時半、7階で医師の定期診察を待つ。
待合室代わりの廊下の長椅子は前の日と打って変わって患者の姿なし。
ほとんどの人が昨日のうちに退院したのだろう。
僕ともう1人だけ待っていたおばさんと話す。
僕とはスケジュールが違ってて、木曜に入院して金曜に手術だったという。
外来で診察を受けたのは火曜。担当となった医師が違うと日程まで変わってくる。
それにしても僕同様日曜に入院して月曜に手術した人がたくさんいたはずなのに、
他に顔を合わせないのはなぜなのだろう?


このおばさんが来る前、長椅子にはとある患者さんと看護婦。
患者さんの友達が亡くなられたとのことで、携帯で誰かにメールを打つ。
悲しみで半ば途方にくれていた。
看護婦が一緒になって励まし、その文面を考えていた。
「こういうときって合掌って最後につけるのかしら?」
「そうですね。普通に終わるんでいいんじゃないでしょうか」

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11/26(金)


もうだいぶよくなっただろうと思って出社。
iPhoneで昔のhitomiを聞いて元気を出す。
「Love2000」「there is ...」「Samurai Drive」など。


行きの電車ではまだよかったのだが(ただし本は読まず)、
オフィスで仕事を始めてからは徐々に頭痛とめまいが。
PCに向かってちょっと仕事しては休憩のため外に出る。
銀行に行ってお金を下ろしたり、スーパーで昼食べるものを買ったり、
薬局を回ってガーゼ、油紙、サージカルテープを買ったり。
昼前、資料を1つ作ったところで力尽きる。


昼は明治のヨーグルト450gと温野菜のサラダ。
ヨーグルトは食べることができたが、サラダは2口でギブアップ。
結局夕方になっても食欲は湧かず、捨てて帰ってきた。
もったいないことをした。せめて開けずにいたらもって帰って来れたのに。


午後は頭使う仕事は無理だと荷物の整理などする。
夕方、打ち合わせ2本は気力で乗り切る。
手術明けだと知られているので
「大丈夫ですか? オカムラさん」と心配されるが、
僕は「いや、大丈夫ですよ?」と虚勢を張る。


20代に人生最大の二日酔いで出社したNo.1とNo.2に比べたら
これぐらい、なんてことない。…はず。


17時半になって帰宅。歩いてる分には具合が悪くならないので東京駅まで歩く。
このまま家まで歩いて帰ろうかと思うが、現実感なし。
丸の内線に乗る。一昨日の退院の倍の距離。悪夢のような30分。
座っているのがよくないのか、揺れるのがよくないのか。
一昨日ほどではないが脂汗が滲む。
オフィスから持ってきたキャラメルを舐める。溶け切るとすぐさま次のへ。
医学的にどういう意味があるのか分からないけど、
口を動かすというのがよい。気が紛れて。
目を閉じて何も考えないようにして30分、
ただひたすら次の駅へ次の駅へとやり過ごす。


無事、到着する。
家に帰って来て風呂を沸かして入り、
野菜ジュースだけで胃を満たして薬を飲む。
19時半に寝て、21時半に1度目を覚ます。
次に起きたのは7時半で、12時間寝た。