こんなサントラを持っている その3

誰も望んでないかもしれませんが、その3です。


――――――――――――――――――――――――――――――
□『Angel Heart


アラン・パーカー監督、ミッキー・ローク主演のダークな探偵映画。
学生時代に観て、焼け爛れたような映像の印象以外に特に記憶に残らなかった。
音楽も記憶にない。
でもなぜサントラを持っているかといえば、
「角川mini文庫」ってので見つけてだいぶ前に暇つぶしで買った
『私のいちばん好きなアルバム』というのの中で
BlanKey Jet City / 現 Sharbets の浅井健一がこれを挙げていた。
そして「悲しそうな美しい世界」と評していた。


聞いてみると乾いた猥雑な音で
僕にとっては悲しくも美しくもなかったんだけど、
確かにその音には濃密な情景が篭っている。
恐らく、聞く人によって思い浮かべるものは異なるだろう。
皆それぞれ、抱えてるものが違うのだから。


なお、この『私のいちばん好きなアルバム』は
小室哲哉が Guns'N Roses『Appetite for Destruction』
草野マサムネが ZELDA『Carnival』
など、けっこう意外なセレクションばかり。その一方で
トータス松本が Sam Cooke『Live at the Harlem Square Club, 1963』
石野卓球が KraftwerkComputer World
など、らしいなあというものも。面白いです。


――――――――――――――――――――――――――――――
□『Solaris


僕が学生時代なんでもう10数年前のことなんだけど、
アンドレイ・タルコフスキー監督のサントラがシリーズで発売された。
Vol.1『僕の村は戦場だった
Vol.2『アンドレイ・リュブロフ』
Vol.3『惑星ソラリス
Vol.4『鏡/ストーカー』


Vol.5があったのかどうかは分からない。
つまり『ノスタルジア』や『サクリファイス』となるんだけど、
たぶんないんだろうな。
日本盤独自の企画のようで、スタッフは日本人で東映の関連会社から販売された。
Vol.3とVol.4は当時リアルタイムに買って、
Vol.1とVol.2は数年前に探し回って新宿の DiskUnion のサントラのフロアで見つけた。


Vol.1とVol.2の音楽はV・オフチンニコフで、
Vol.3とVol.4はエドゥアルド・アルチェミエフ。
聞き比べてどっちがどう、という明確な違いはなくて
どちらも水滴が感じられそうなほど深い、霧の中にいるような音。
タルコフスキー監督の趣味なのだろう。


E・アルテミエフの方はPARCO出版から出ていた
『現代音楽 CD×100』という本にて紹介されていた。
シンセサイザーを開発したエフゲニー・ムルジンのもとで
最初の作曲家・演奏家になったのだという。


改めて4枚聞き比べてみて、
やはり独特な音をしているなあと思うのは『惑星ソラリス
ところどころバッハのオルガンの曲を使ってるようなんだけど、
誰もいない何百年と閉ざされた教会の中で虚ろに鳴り響くような。
批評家にとっては有名な、あの「鐘」の音も聞こえる。
その他は宇宙空間を模した、古典的なノイズの連なりであったり。
どこの国、どこの時代とカテゴライズすることが何の意味ももたらさない。
違う次元で鳴っていた、鳴りつつある、鳴ることのなかった、音。


――――――――――――――――――――――――――――――
□『Soleil trompeur』


エドゥアルド・アルテミエフでもう1枚。
同じくロシア、ニキータ・ミハルコフ監督の『太陽に灼かれて』のサントラ。
さすがにこちらは割と普通の映画音楽が並ぶ。


学生時代にロシア語の授業で毎週少しずつビデオで観たんだけど、
冒頭で流れるタンゴの曲『Outomlionne Solntce』がずっと印象に残ってた。
スターリンの大粛清時代を描いた映画。1994年の作品。
今思うとリアルタイムに教材として使われていた。


E・アルテミエフはアンドレイ・タルコフスキーだけじゃなく
対極的なニキータ・ミハルコフの作品もいくつか手掛けていて、
古いところだと『機械じかけのピアノのための未完成の戯曲
最近だと『12人の怒れる男』どちらも名作ですね。


観てないけど、最新作『戦火のナージャ』でもコンビを組んでいるようだ。
太陽に灼かれて』の続編とのこと。


――――――――――――――――――――――――――――――
□『sex, lies, and videotape』


スティーヴン・ソダーバーグ監督の26歳の処女作にして
カンヌ・パルムドール獲得という偉業を成し遂げた作品。
この映画だけ、他と違う何か異質な輝きを放っている。


8曲入りのミニアルバム。ケースもシングル用の薄いやつ。
どこかの中古屋で見かけて買った。
その後見たことない。
というか、そもそもソダーバーグ映画のサントラって観たことない。
有名なアーティストの有名な曲を使ってたことって、あったっけ?
ソダーバーグにとって必要なのは映画を構成するパーツとしての音楽であって、
曲とか歌じゃないんでしょうね。


改めてこのサントラを聞いてみると
その辺のシンセサイザーやリズムボックスなどで演奏したような
宅録のデモテープのような音。
解説を読むと音楽はクリフ・マルティネス(Cliff Martinez)という
ミュージシャンによるもののようだ。
ドラマーとしてキャプテン・ビーフハートレッチリと競演しているという。
なんだかすごい経歴。
調べたら『KAFKA/迷宮の悪夢』から『トラフィック』『ソラリス』まで
その後のソダーバーグ監督作品の大半で音楽を担当したようだ。
amazonで検索してみたら、この人の個人名でサントラがリリースされていた。


――――――――――――――――――――――――――――――
□『Spinal Tap』


スパイナル・タップというイギリスのヘヴィメタのバンドが出てきて
全米をツアーして回るんだけど、
実は架空で、映画もドキュメンタリーのようでいて擬似。
バンド同様、伝説というか、もはや神話に近い映画。
何かと引き合いに出される。
SF映画における『ブレードランナー』のような位置づけ。


何がややこしいかって、スパイナル・タップって架空という触れ込みなのに
映画がカルトヒットしてそこそこ人気が出てしまったもんだから
その後もアルバムを出し続けたんですよね。再結成してみたり。
どこまで本気なのか・・・
でもこのサントラもパロディーなムード100%なのに
ポップなヘヴィメタでなかなか聴かせるんですよね。


監督は後に『スタンド・バイ・ミー』を撮ったロブ・ライナー
ヘヴィメタは嫌いだとしても、ロックが好きなら絶対見たほうがいい。
今や有名な「ボリュームの目盛りが11まであるアンプ」とかさ、
腹抱えて笑えるエピソードの連続。