こんなサントラを持っている その9

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□『Alphaville』


ゴダールの『アルファビル』のサントラ。
こういうのが国内盤として発売されているというところにニッチな市場を感じる。
折り畳まれたミニポスターが封入されているのが
コレクターズ・アイテムとしていかにも。
とっくの昔に廃盤になっているだろう。
全部で10分にも満たない。
サスペンス色の強い近未来SF映画を撮るにあたってシンセサイザーを使わず、
オーケストラで表現するならこうなるか、と思い描くまさにそのものの音。


じゃあこれが音源として珍しいかというとそんなことはなく、
ジャン=リュック・ゴダール作品集』というアルバムに全曲入っている。
これは割りと中古で入手しやすいようだ。
その他に入っているのは『勝手にしやがれ』『気狂いピエロ』『軽蔑』
勝手にしやがれ』はモダン・ジャズ。
気狂いピエロ』はアンナ・カリーナが歌っている。


僕は特にゴダールに特に強い思い入れがなく映画を観てきたんだけど、
それでももう1枚ゴダールがらみで持っていた。
『シネマ・クラシック』シリーズのゴダール篇。
これ、タルコフスキー篇があったように思う。
調べてみたら、ヴィスコンティベルイマン、アイヴォリーが出ていたようだ。
曲目を書き写すと、
勝手にしやがれ
 1. ワルツ第4番ヘ長調op.34-3「華麗なる円舞曲」(ショパン)
 2. クラリネット協奏曲イ長調K.622〜第3楽章(モーツァルト)
恋人のいる時間/カルメンという名の女
 3. 弦楽四重奏曲第9番ハ長調op.59-3「ラズモフスキー第3番」〜第2楽章
  (ベートーヴェン)
気狂いピエロ
 4. フルート協奏曲ヘ長調op.10-1「海の嵐」〜第1楽章(ヴィヴァルディ)
中国女
 5. ピアノ・ソナタ第13番イ長調D.644〜第1楽章(シューベルト)
ウィークエンド
 6. ピアノ・ソナタ第17番ニ長調K.576〜第1楽章(モーツァルト)
勝手に逃げろ!/人生
 7. 歌劇「ジョコンダ」〜自殺(ポンキエルリ)
パッション
 8. 左手のためのピアノ協奏曲ニ長調〜レント(ラヴェル)
ゴダールのマリア
 9. マタイ受難曲BWV244〜われら涙もてうずくまり(バッハ)
ゴダールの探偵
 10. 田園組曲~第4曲ワルツ・スケルツォ(シャブリエ)
ヌーヴェルヴァーグ
 11. 交響曲「画家マチス」〜第2楽章「埋葬」(ヒンデミット)


『アルファビル』のサントラは金に困ったら売ろうと思う。


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□Tuxedomoon『Divine』


フランスを代表するバレエの振付師モーリス・ベジャールによる
1980年代初め頃の作品「ガルボの幻想」の音楽。
グレタ・ガルボの生涯をテーマとしていて
Tuxedomoonによる楽曲もまた、その主演作品から曲名が取られている。
「Grand Hotel」「Mata Hari」「Ninotchka」など。
肉声もサンプリングしている。
彼らのアルバムの中で最もヨーロッパ的で耽美的な音が聞ける。
代表作の1つ。


ベジャールは数年前に亡くなっている。
僕は1度だけ、2004年の来日公演を観に行ったことがある。
(この年は la la la human stepsピナ・バウシュの『バンドネオン』、
 アイーダ・ゴメスの『サロメ』、ニューヨーク・シティ・バレエを観ている)
当時の日記を見てみたら、演目は以下の4つだった。
「海」「バトリー・フュガス」「これが死か?」「バクチ???」
自分の中でのステレオタイプなバレエのイメージを覆す、鬼気迫るものを感じた。
バレエの神、モーリス・ベジャールはカーテンコールで登場した。


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Jonny Greenwood 『Bodysong.』


未来の映画音楽の大家ってことになるんだろう。
ジョニー・グリーンウッドは。
既にしてトム・ヨークよりも「Radhioheadのメンバー」という肩書きから
相当自由であるように思う。
トム・ヨークのソロはどこまで行っても
 そこから逃れるための強迫観念的な過程としか感じられない)


ノルウェイの森』のサントラもかなり素晴らしかったですが。
BBC専属の作曲家となってからの成果を存分に発揮した
ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』もなかなかですが。
その原点と言えばこの作品。
詳しいことは分からないんだけど、人体に関するドキュメンタリーであるらしい。
既存の音楽概念のイディオムの残骸が不協和音として、ノイズとして、並べられる。
不安であるとか恐れであるとか、
直接的な感覚(触覚や聴覚)の先にあるものはやはり身体から発するのだ。
そんなことを思う。


ジョニー・グリーンウッドだと
レゲエの「Trojan」レーベルの楽曲をコンパイルした
Jonny Greenwood is the Controller』もいいですね。
サントラではないですが。


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□『Eastwood After Hours Liva at Carnegie Hall』


クリント・イーストウッドの監督や主演作品にて使われた曲の中から選んで、
息子のカイル・イーストウッドを初めとする大勢のミュージシャンが
コンボやオーケストラで演奏する。
場所はニューヨークのカーネギー・ホール。
それをクリント・イーストウッドが客席から鑑賞する。本人は主役とならない。
なんとも贅沢な一夜。


セロニアス・モンクの「Straight No Chaiser」や「'Round Midnight」
レスター・ヤングの「Lester Leaps In」
チャーリー・パーカーエロール・ガーナー
それにイーストウッド自身が作曲した曲。
演奏するゲストにジョシュア・レッドマンジミー・スコットなど。


このときの模様が映画になっているけれども、
もちろん監督はイーストウッドではない。
演奏の合間合間に『ダーティー・ハリー』など実際の作品からの映像が挟まる。


単なる回顧的なコンサートではなく、
イーストウッドならではの乾いた緊張感のあるステージだった。


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□『Blue in the face』


90年代ニューヨークを代表する小説家、
ポール・オースターの原作による『スモーク』の姉妹編。
ポール・オースター初監督作品ということになる。
(実際には『スモーク』のウェイン・ワンと共同監督)
『スモーク』はニューヨークの下町を舞台とする人情味溢れるいい話だとしたら、
『ブルー・イン・ザ・フェイス』はそのアウトテイク。
ポール・オースターが映画撮ってるぞってことで
友人・知人たちが撮影現場を訪れ、
そのときにカメラを回して遊びで撮った映像が元になっている。
即興で決めた設定と小道具・衣装で役柄を演じる。
マドンナがセクシーなメッセンジャーだったり、
ルー・リードジム・ジャームッシュがしょうもないことを喋っていたり。
こっちのほうが断然面白い。


音楽はジョン・ルーリールー・リード
Talking Heads のディヴィッド・バーンなど。オムニバス。
ちなみに Geggy Tah というグループは
数年前に日本でもヒットしたデュオ、
The Bird and The Bee の男性の方が在籍していた。