博多〜釜山 その7(3/20:博多も雨)



船の時間は10時。ギリギリ8時までは寝てられるな、と考えていたけど
6時半に目が覚めてそれっきり眠れなくなる。
外が暗い。見ると雨。かなり強く降っている。
雨が降ることなんて考えてなくて、傘がない。
風呂を沸かして入って、Twitterをチェックして、荷物をまとめて、
としているうちに7時半過ぎ。早めにチェックアウトする。
1階のカウンターで鍵を返すと何の確認もなしにオーケーと言われる。


外に出る。1駅歩いて釜山港国際ターミナルまで行くつもりが、ずぶ濡れになりそう。
地下鉄の駅まで走っていく。隣の中央駅で下りて、また雨の中を歩く。
同じように欧米系の僕ぐらいの年の男性が
雨の中をフードをかぶって小走りになって急いでいる。


辿り着いてホッと一息つく。
ちょうど博多から乗客が下りてきて入国審査を受けてゾロゾロと出てきたところだった。
1階に下関行きや対馬行きやかめりあのフェリー会社のカウンターがあって、
2階がコービーとビートルのカウンターとなっていた。
8時半から搭乗受付開始ということでしばらく待つ。
お土産屋を見て回る。慶州パンに始まり、キムチチョコレート、ヨン様チョコレートまで。
今回は一応オフィシャルには誰にも博多〜釜山行きのことを言ってないので
親にも会社にもお土産を買っていかないつもり。
自分に対しても絵葉書一枚買ってない。とにかく金は使わない。
(とは言っても結局ばれてたが…)


8時半になって手続きをして搭乗券を受け取り、
オイルサーチャージ12,500ウォンと施設使用料3,200ウォンを支払う。
あとはウォンを使うこともないと両替する。
残ってた306,000ウォンが21,540円となる。4万もってきて半分使ったことになる。
…おかしい。感覚的にはそんなにお金がかかってないように思う。
9時になって出国審査と手荷物検査を受けて、
待合室の椅子に座ってここ3日間で使った金額をノートに整理してみる。
やはり50,000ウォンほど計算が合わない。
ホテルで財布の中を整理したときに
50,000ウォン札を床に落として気付かなかったのだろうか?
だとしたらかなりショックだ。
慌てて財布やリュックの中、書類をあれこれ挟んだクリアファイルの中を探す。
そしたら初日に博多で両替したときの銀行の封筒の奥の方に
折り畳んで皺になっていた50,000ウォンがひっかかっていた。
危ない。捨てるところだった…


『カタロニア賛歌』を読み終えて手元に読むものなし。
テレビのバラエティー番組を見る。
韓国では人気のある歌手なのか、ゲストに呼ばれていろんな人の真似をしながら歌う。
待合室の裏にロッテ免税店の受け取りカウンターがあった。
聞こえてくる会話から察するに韓国人よりも日本人の方が多そうだった。
何人かクリスピー・クリーム・ドーナツの箱をお土産に買っていた。
そう言えばどこかで見かけたな。
博多にないのかと思いきや、今月頭にオープンしたばかりだった。
かつての新宿サザンテラスの1号店のように今、ものすごい行列なんだろうな。
だとしたら当面釜山で買って持ち帰ったほうがお徳ということか。
先月までは東京や大阪で買うよりも釜山で買うほうが便利だったのかもしれない。


10時前になって、ようやくビートルに乗り込む。
船長なのか、乗船口の手前で傘を差してくれている。
3人掛けの席の窓際となる。
ビートルは日本側の会社で運営しているため、乗務員はみな日本人だった。
出航する。さらば、釜山。
斜面にへばりついた街並みとドック入りした貨物船と工事中の橋桁と。
当たり前だけど、来たときに見た風景を逆に辿っていく。


船内設備のビデオが上映された後に
NHKの番組で京劇を演じていた中国人の夫婦が
日本に亡命(?)して数十年、というドキュメンタリーとなった。
うつらうつらしているうちに終わってしまう。
iPhoneで音楽を聞きながら寝てようかと思っていたところに
ビデオの上映となって『おとうと』
そういや見てなかったな、と博多までの時間をこの映画を見て過ごす。
吉永小百合がしっかりものの姉で、笑福亭鶴瓶がダメな弟。
監督が山田洋次。名作ってほどでもなかったけど、
最後のここぞとばかりに泣かせる場面ではやはりほろっと来た。


途中、イルカやクジラの生息する海域を通り抜けるということで減速航行した。
それもあって5分ほど到着が遅れる。


到着。博多もまた雨が降っている。
入国審査はあっさりとしたものだったが、税関審査で思わぬ質問。
何人か立っていた中にかわいらしい、初々しい子がいたので
ああまだ新人なのかなあと思ってそっちに並んでみたら
僕の税関申告書とパスポートを見て、
「東京からだったら、なぜ飛行機で直接釜山まで行かなかったんですか?
 なぜわざわざ博多からフェリーに乗ったんですか?」
しどろもどろになる。
いや、あの、その、マイルが溜まって福岡まで往復できることになったんで、
そしたらフェリーで釜山まで行けることが分かって…
「釜山に知り合いの方がいらっしゃるんですか?」
いえいえいえ。
どうにかこうにか解放される。
荷物になるからとシェーヴァーをもってこなくて
ヒゲボウボウだったのがよくなかったのか。


50,000ウォン札1枚を両替して、博多港ターミナルの外に出る。
ちょうどよく来たバスに乗って博多駅へ。
港を離れて呉服町、祇園
ああこの辺歩いたなあとなんだか遠い昔のように思いながら風景を眺める。
博多駅で下りると目の前には京都駅のように大きな駅ビルが。
3月3日にオープンしたばかりの「JR HAKATA CITY」これがそうか。


駅前にずらりと募金箱を持った総勢数十人の団体が
東北関東大震災の被災者への募金を募っていた。
1人が街往く人々に大きな声でお願いの言葉を呼びかけると
最後に全員で「お願いします!!」と繰り返す。これを1人ずつ続けていく。
なんだかぞっとした僕は何も見ていない、何も聞いていないかのように
背を向けてその場を離れた。