磐梯熱海温泉へ(その1 郡山を歩く)

先日チラッと書いたことだけど、ひょんなことから
福島県郡山市の先、磐梯熱海温泉へと1泊で行くことになった。
風評被害で観光客が激減、経営難に陥りつつも
なんとか営業を続けているというニュースを読んで、
ああ、僕らにできるのってこういうことぐらいなのかもな…、と。
いきなり素人が岩手・宮城に行ってボランティア活動ができるわけでもなし。
こういうことですら不謹慎なのか、
ただ遊んでるだけじゃないかと最初のうちは迷ったけど、
これもまたささやかなりとも人助けになるはずと信じて郡山へと向かう。
スケジュールを立てたり高速バスや宿の手配は僕が行った。


朝、普通に起きて開講準備のメールを読んで、
着替えてリュックサックを背負って部屋を出る。
明日は昼までに新幹線で戻ってきて恵比寿で感門之盟に出席。
その間、ノートPCをネットにつないであれこれ準備をしなければならない。


8時前に東京駅鍛冶橋の高速バス乗り場に集合。
今回5名で向かうけど、3名の方とは初めて。顔合わせしてバスに乗り込む。
最後尾1シートが僕らだった。ゆったり座る。僕以外は皆眠りだす。
バスはほぼ満席。高速に入って北へと向かう。
工事中のスカイツリーが至近距離から見えた。


東北自動車道に入って、1時間で久喜へ。
左右を緑地帯に囲まれる。
何の変哲もない埼玉の風景が広がる。
空を眺める。うろこ雲。
目覚まし時計をセットしたままだということを思い出す。


気が付くと山に囲まれていて、佐野。サービスエリアで休憩。
この辺りはまだ桜が満開だった。
時間もあまりなく、トイレに行ってすぐ戻ってくる。
佐野はラーメンが有名ということで
ガラス張りのブースで麺の手打ちを実演していた。
同じ時間帯にあの津田大介もまた佐野サービスエリアにいたことを
Twitterで知る。南相馬村に向かうとのこと。
自分たちがバカっぽく見えてくる…


しばらくウトウトする。
阿武隈サービスエリアで2回目の休憩。
お土産屋に入ってみると桜色のうどんが売られている。
栃木といえば、ということでレモン牛乳キャラメルをお土産に買う。
以前、栃木出身の人と仕事していたときによくもらってた。
バスの中でレモン牛乳アイスを食べる。


福島に入って高速を下りる。
明後日の開講に備えて、
ネットにつないで以前松岡校長の書いたことを読んだりして過ごす。


東京で地震があったことを知る。
震度や震源地など不明。
世の中の人たちは地震に関する情報をリツイートしなくなった。
ただ、自分がいる場所が揺れたということだけをツイートする。
福島も揺れたのだろうか。バスに乗っていて、気が付かず。


郡山市街に入る。
国道沿いのロードサイドの大型店舗が連なる。
駐車場にも普通に車が停まってて、
何の変わりもなく日常生活が営まれているように思われる。
3.11の震度は東京23区と同じぐらい、震度5弱ぐらいか。
倒壊した建物を見かけることはない。


12時前、郡山駅前に到着する。
「正月屋」というラーメン屋がうまいと聞いていて、そこで昼を食べることにしている。
駅前の大通り、さくら通りを西へと歩いていく。
チェーン店の居酒屋ばかり。あとはシャッターの下りた店舗が目立つ。
青森駅前と一緒。土曜の昼前なのに若者の姿が見えない。


歩いているとそこかしこに震災の影響が見える。
黄色いテープで囲われて立ち入り禁止になった建物。
ひび割れた壁がそのままになって「調査済み」などと貼り紙のされたビル。
歩道がでこぼこになって、足元が崩れている。
商店街には色のついた紙に「がんばろう郡山」とだけ書かれた簡素なポスター。
一見何の影響もなかったようでいて、
よく見ると壁のなくなった家屋や
2階の窓が割れたままになった店舗がそのまま残されている。
古びたコンクリートの一部が崩れて瓦礫のようになった箇所もあった。
屋根がひしゃげて、中もめちゃくちゃになって真っ暗なままのボーリング場。
郡山市役所は割れた窓に板を張って
屋上で小さなクレーンが2機のろのろと動いていた。
向かいの球場の脇には自衛隊のトラックが何台も整列して停車している。
街のあちこちを岡山県警静岡県警、熊本県警のパトカーがパトロールしていた。
都内と変わらないと先ほど思ったのは嘘だった。


近くの中学校の生徒たちが放課後、トレパン姿で
屈託ない笑顔で騒ぎながら歩いている。
東北っぽいなあと思った。


風が強くて、しかも杉花粉が飛びまくってて、くしゃみが止まらない。
涙も鼻水も出てくるし、目がかゆくてたまらない。
見ると郡山は桜が満開。そうか、東京は収まりつつあって油断してた。


市役所を過ぎて、北に曲がる。
30分以上歩いて「正月屋」を見つける。広い駐車場のある大きな店だった。
昼時で店内で行列となる。家族連れが多かった。
入口の待つところに、「CREA」をはじめとして
紹介された多くの雑誌のページが飾られていた。
それによると元々和食の料理人だった店主のこだわりで作られたラーメンとのことで
醤油味の支那そばがイチオシのようだ。
しかし僕は味噌そばが気になってそちらにした。
合わせ味噌らしいんだけど、甘みがあって、うまみがあって。
おろした生姜が入っているのもアクセントとしてよかった。
これいいね。今度自分で味噌ラーメンを作るときにも入れてみよう。
ホロホロになるまで煮込んだ肉もうまかった。
塩味っぽい鳥そばであったり、辛みそばであったり、
また郡山に来るときがあったら違う味のを食べてみたいんだけど、
そんな機会は果たしてあるのか…