青森帰省 '2011夏 その4(8/20 浅虫温泉)


17時。夕暮れの日差しのなか、浅虫温泉に到着する。
今回泊まったのは「旅館小川」
母娘2人で営む小さな旅館。4室のみ、最大20名とのこと。
http://asamushi-ogawa.com/top.html


入口は馬の銅像でお出迎え。
そして女将を模したと思われるねぶた。
館内にもミニチュアサイズの本格的なねぶた。
棟方志功の絵が飾られていたり。
その設えは実はかなり和洋折衷の寄せ集めなんだけど、
不思議と調和していて違和感がない。むしろ、センスの良さを感じる。


僕と母、妹夫婦と部屋を分けてくれた。
一緒にしたらもう一組泊められるのに。こういう気遣いは嬉しい。
泊まった部屋は床の間のある和室にベッドのある洋室が続いて、広い。
さっそく風呂に入りに行く。浴槽はヒバかな。
2人も入ればいっぱいになるぐらいの小ささ。
しかし、泊り客が少なくて貸切のような状態になるため
むしろこれぐらいがちょうどいい。
上がってさっそくビールを飲む。
もう1度入りに行って、夕食。


ほやは東京で食べるようなぶよぶよしたものではなく、
海老やホタテなど刺身ももちろん新鮮。
硬く身が引き締まって透き通るようなイカが最高。
マリネの白身魚は軽く炙って色をつけたんだったか。
手間隙かけている。これを女将さんと娘さんの2人でつくるのだという。
メインは鍋で自らかき混ぜて作る味噌貝焼き。
下北風なのでイカの塩辛が入っている。これは初めて。
もう1つはリンゴのグラタン。
中をくりぬいたリンゴの中にホタテの入ったクリームソース。
新発明に近いぐらい、おいしかった。
最後のアイスに至るまで1つ1つ、思いが込められていて。
こんなおいしい旅館の食事は初めて。
これで1万2,000円!?
驚きの安さ。東京だったら2万は越えるだろうなあ…
あとで聞いた話では、予約の際に
前も泊まったことがあると伝えると前回のメニューを調べて
違うものを提供するのだという。これはすごい。


母が珍しく日本酒を飲む。豊盃の「ん」残念ながら田酒はなし。
浅虫温泉の宿はお湯はよくても
態度であるとか料理とか残念させられることが多かった。
だけどここは全然違う、と3人で話す。
僕自身はもう一生、浅虫はここでいい。
このまま何日か滞在してのんびりしたい。


運んできた娘さんとあれこれ話したけど、覚えているのは
リンゴが新鮮で雪室ではなくガス貯蔵を昨年から利用し始めて…
というところから派生して、
奇跡のリンゴ」で有名なリンゴ栽培の神様、木村秋則さんの
お弟子さんが始めた農園で作っているというリンゴジュース。
これがうまい。最後残っていたサンプルを3人で分けて飲む。
リンゴ本来の渋さと甘さ、そして瑞々しさがある。
前は旅館でも売ってたけど、完売。次のシーズンを待たなくてはならない。
http://natsubori.com
昨年から農園を開いて、今年遂に完全無農薬で栽培を開始。
この秋初めての収穫。このリンゴ、食べてみたい。


食べ終えて妹の旦那と隣のバーへ。これがまたいい。
寂れた温泉街の場末のスナック、みたいな雰囲気は皆無。
スタンダードなジャズが流れている。そしてそれに見合うだけの空間。
このバーだけでも遅くまでやってるといいのに、と思うが21時半まで。早い。
津軽海峡」という青森でよく見かける焼酎を水割りで。
後片付けの合間に娘さんが時々来てくれておかわりをつくってくれる。
娘さんは僕らの家の近くの高校に通っていてびっくり、という話になる。
バス停のミニストップが、とか、線路脇の焼き鳥屋が…、と盛り上がる。
青森市の東の端から西の端へ、電車を乗り換えて片道1時間半だという。


仕事で遅れた妹がようやく宿へ。
おなかがすいたでしょう、と最初おにぎりを握ってもらうはずが
いつのまにか汁物つきのうな丼へ! これぞもてなしの心。


飲めるだけ飲んで、最後また一風呂浴びて、
余っていたビールを飲んで眠る。
キース・リチャーズの自伝を少し読む。
午前0時。


母から、若い頃、青森を出て東京で働いていたときのことを聞く。
1968年から1970年にかけて。
新宿で働いていた母は毎日のようにデモを眺めていた。
青森から出てきて自分には関係ないことだと思っていた母はただ、眺めていた。
「でもね、あの人誰だっけ、宮本なんとかと結婚した。
 …そう、伊丹十三だけはあの時誰よりもかっこよかった!」