「エッセンシャル・キリング」

昨日は会社の帰りに「エッセンシャル・キリング」を見に行った。
渋谷のイメージ・フォーラム。
池袋西武でスーツを買った帰りに21時過ぎのレイトショーで。


19時半には映画館に着いて整理券をもらう。
気がつかなかったんだけどこの日は毎月1日の映画の日で、1000円で入れた。
近くのスタバはいっぱいで通りを渡ってファースト・キッチンへ。
2階はガラガラで喫煙席で若者がポツリポツリと離れて座って
携帯を眺めながらハンバーガーを食べていた。
そんな中僕はアイスカフェオレを飲みながら
映画のパンフを眺めたり本を読んで1時間あまり過ごした。
それはそれでなんだか楽しかった。


「エッセンシャル・キリング」は
「ザ・シャウト」や「アンナと過ごした4日間」で知られる
イェジー・スコリモフスキ監督の最新作。今やポーランド映画界の巨匠。
http://www.eiganokuni.com/EK/
僕の知るかぎりこの夏、アート系では最も話題の作品だったように思う。
あちこちでの評価も高かった。


ヴィンセント・ギャロ扮するイスラム系の主人公が
中東の砂漠の洞穴にてテロ行為を行なう。
捕まって収容所にて拷問を受け、後にどこか雪深い国に護送される。
その途中で車が横転し、一人だけ助かる。
そこから先、果てしなく逃げ続ける。
木の実のみならず木の皮や蟻を食べて飢えをしのぎ、
乳飲み子を抱えた女性に銃を突きつけ母乳を吸うことまでする。
生き延びるためには人間だろうと犬だろうと無言で殺す。
いつのまにか追っ手のアメリカ軍の姿は消え、一人きり、
まるで自分自身から逃れるかのように先へ先へ、雪の中を進んでいく。
ただ、それだけ。


評判通り「すごい」映画だった。
ブレッソンの「ラルジャン」を思い出した。
一言で言って、格調が高い。
とはいえ安易に芸術と呼ぶには何かが違ってて、
「ザ・シャウト」や「アンナと過ごした4日間」と同様に
どこかバランスというか均衡が崩れている。まるで悪夢のよう。
とはいってもハネケのように悪夢のための悪夢とは違って、
誠実さを追及する過程の奥に悪夢が垣間見えるかのような。
その純度が「アンナと過ごした4日間」よりもはるかに上がっていた。
というか純度のみ。


それ以上あんまり言うことないですね。
ぜひとも劇場の大画面で鑑賞を。


最後に1つだけ言うと、このイェジー・スコリモフスキ監督って
「ザ・シャウト」がまさにそうなんだけど
音響というものに対する感覚の鋭さが並大抵でない。
そしてそこから紡ぎ出される言葉にならない言葉。その言語感覚。
「ザ・シャウト」では声や叫びそのもの。
アンナと過ごした4日間」では交わされることのない会話。その静けさ。
そして「エッセンシャル・キリング」の徹底したノイズ。
背景音も音楽も、周りで交わされる声の塊も。
全ての音がまとわりついてくるんですね。生々しい。

    • -

話変わってエミール・クストリッツァ監督の「アンダーグラウンド」が
9/24(土)から4週間、渋谷シアターNで公開される!
これは絶対見に行かないと。
予告編だけで昨日はウルウル来てしまった。