今から7・8年前。
大森のお客さんのところに長らく常駐していたときのこと。
あるとき、上司からこんな話を聞いた。
「なんかの番組を見ていたら大森の○○亭という中華料理屋が出てきて、
羽根つき餃子がうまそうだった。今度行きたいから岡村、探しとけよ」
上司の命令とあらば、探さないわけにはいかない。
というか僕自身がそれ、食べてみたい。
以来ずっと、その○○亭を探し続けた。
いつも昼を食べに行くエリアでは見かけたことがない。
遠出する。探す範囲を広げる。駅の反対側まで行ってみる。
それでも見つからない。googleで検索しても引っ掛からない。
諦める。時々ふっと思い出してまた探してみる。
冬になり、夏になり、1年が過ぎた。
そんなある日。
仕事に行き詰まってあてもなく外を歩いているうちに、
それまで知らなかった住宅街に入り込んでいた。むしろ大井町に近い。
気分転換にそのまま足のむくまま進んでいく。
すると「○○亭」の看板が!
数日後、先輩を伴って帰りにその店に入ってみた。
どこにでもあるような小汚い普通の中華料理屋だった。
子供のおもちゃや絵本がその辺に転がっているような。
会社帰りのサラリーマンであるとか、そこそこ客が入っている。
何品か頼んで肝心の餃子へ。羽根つきと言えば言えなくもない。
まずいわけではないけれども、とりたててうまいわけでもない。
他のメニューも同様だった。
テレビで紹介される店ってこんなもんか、と思った。
その後上司と会ったときにさっそくこのときのことを話した。
聞いた上司はたった一言、
「岡村、ごめん、あれ蒲田だった。言うの忘れとったわ」