印刷博物館

今日は知ってる方の所属しているアマチュアのオーケストラの演奏会ということで
飯田橋トッパンホールへ。
ふらっと行ってみたら前売り券が完売、当日券なし。しまった。甘く見てた。
わざわざここまで来てどうしたもんか。周り何もなし。
でも凸版印刷のビルということで「印刷博物館」が併設されていて。
そちらに入ってみた。
http://www.printing-museum.org/index.html


企画展として「日本のロングセラー商品展」というのが開催されていて、入場無料。
まずはそちらに入ってみた。
http://www.printing-museum.org/exhibition/pp/110820/index.html
スーパーやコンビニで見かける身近な商品。
そのパッケージって「時代を映す鏡」であって。その名作をたくさん集める。
ロングセラーの商品は何十年、時には何百年もの歴史があって。
その実物と発売当初の写真とを並べて展示する。
入口は1970年代以後。カップヌードルに始まって、
無印良品、ヨーグレット、赤いきつね、亀田の柿の種、ぺヤングソース焼きそばなど。
そこからどんどん遡っていく。
カネヨクレンザー、ヘチマコロン、チチヤスヨーグルト、ビスコ
ケロリン、オーバンド、泉屋スペシャルクッキーズ、オリエンタルカレー。
(僕が実際に愛用していたわけではないけれど)懐かしいものばかり。
昭和の匂い。


そして時代を遡っていく。高度経済成長の時代。終戦後の発展期。
太平洋戦争の時期がぽっかりと空いて新商品というものがなく
(やはりそれは見ててちょっと怖い)
大正・昭和初期のモダン、ハイカラな明治。


すごいのはパッケージそのものはさすがに残っていないものの
何百年と歴史のある商品たち。


 1597 宇津救命丸
 1602 養命酒
 1624 カステラ


明治期のをピックアップすると


 1893 電気ブラン
 1890 エビスビール
 1896 イカウスターソース
 1902 金鳥蚊取線香
 1907 赤玉ポートワイン


パッケージを比較すると細部はガラッと変わってるけど
全体的な「らしさ」は継承されている。
こういうのを大事にするっていいですよね。


地下の博物館の展示は有料で300円。
入口から入ってすぐのギャラリーは印刷の歴史を辿れるようになっている。


ラスコーの洞窟壁画、エジプトの「死者の書」と時代が下って
ロゼッタストーン、古代メソポタミアの粘土板と「ハンムラビ法典」、中国の竹簡。
インカの結縄文字、鳥獣戯画グーテンベルク活版印刷の諸々を経て、
近代・現代へ。「東京日日新聞」「赤い鳥」「キング」
しかし、聞いてみたらこれらほとんどがレプリカだという。
そりゃそうか。実物は戦後のものだけ。
レミントン社製のタイプライター、少年マガジンやサンデー。
黎明期のマッキントッシュ
人類が文字を発明し、知識や情報を後代に伝えようとして試みてきたことの数々。
その歴史を辿れるようになっている。
メディアの進化の歴史がそのまま、印刷の進化の歴史なのでした。


VRシアター」が上映時間となったので入ってみる。
凸版印刷と言えば、ヴァーチャル・リアリティー技術。
僕の知っている人もここに関わっていた。
今上映しているのは奈良の東大寺の大仏。
華厳経の須弥山の考え方の解説から始まって、東大寺の中へ。
大仏の周りを自由自在にぐるっと回る。
ふーん、滑らかな撮影だなあと思ったんだけど
あれがヴァーチャル・リアリティーだったのか。


本編の展示へ。印刷物の歴史ということでガラスのケースに入って、
阿弥陀如来坐像印仏」、グーテンベルクの「42行聖書」、
デカルトの「方法敘説」、ダーウィンの「種の起源」、
そしてディドロダランベールによる「百科全書」が何巻も。などなど。
これら、本物だったのだろうか?
写楽北斎の浮世絵は複製と書かれていたけど。


他に中国や朝鮮の活字の作られ方の歴史、各種書体の発達の歴史など。
興味深かったのは版画の歴史のセクションで流れていた晩年の棟方志功の映像。
下絵をサラサラと恐るべきスピードで仕上げて掘り始めるんだけど、
そのときに鼻歌で「喜びの歌」を歌ってるんですね。
このときだけだったのか、いつもの習慣だったのか。
彫り終えると、刷る。新聞紙の上に無造作に版木を置いて
両者の接する面に何かニスのようなものを塗って、表には墨を。
紙をそっと乗せてバレンで優しく撫でていくと菩薩像がすっと浮かび上がってくる。


メモを取るときにボールペンで書いていたら、
鉛筆を使ってくださいと一本渡される。
なんでかと聞くとインクが、とのことだった。
印刷博物館ゆえのこだわりか。


アメリカの20世紀初めの広告ポスター。軍隊の募集であるとか。
日本の明治以後に移って、引札や活動写真のビラ。


印刷機の発展。水平式から回転式へ、そして輪転機
小さな模型が動くようになっている。こういうのは面白い。
何よりも興味深かったのは「鋳植機」というもの。
ライノタイプ」という名前だったか。20世紀初めに実用化される。
タイプライターのようにキーを打つと
背後の巨大な機械が動いて活字を自動的に並べていく。
大きな棚に並べられた金属の活字が自動的に拾われて下へとレールを流れていく。
昔、子供の頃に複雑な構造を組まれたレールの中を
右に左に小さな球が流れていくのを眺めるおもちゃがあったけど、ああいう感じ。


最後に「印刷の家」というガラス張りの部屋があった。
中は壁いっぱいの活字に製図台のようなものがいくつか。
デモンストレーションなんだろうけど、
中では初老の男性二人と若い女性が一人、活字を拾っていた。
http://www.printing-museum.org/bottega/index.html
僕は申し込まなかったけど、毎日15時から人数限定で
活版印刷無料体験というのがあるようで。
外から見てると体験者が写植室で活字を拾っていた。
今思うとやっておけばよかった。
秋はコースターを作るとのこと。


ミュージアムショップでは過去の図録。
ドイツ、オランダ、チェコなどヨーロッパの優れたデザインの本を紹介する
企画展を定期的に行っているようだ。
他に気になったのは「百学連環」という博物学と百科事典の歴史と、
空海からのおくりもの」
線文字Bやルーン文字トンパ文字などの歴史の彼方に消えた文字を
解説する叢書のシリーズなんてのもあった。