酸素

このまま僕は、あと何年生きていたいかということを考える。
何も出て来ない。長生きして死ぬんだろうなとか、そんなことすら考えない。
というか何をどう考えてよいのか分からない。


同世代(30代後半)の人たちはこんなこと、考えるのだろうか?
と思ったけど、いや、普通に考えているのだろう。
家のローンがあと30年あったら、嫌でもあと30年は生きることを考える。
国民年金の支給が68歳まで引き上げられると聞いたら
そのときの自分を思い浮かべる。
人生設計というものがある。


これまでなんとかなってきたし、これから先もなんとかなるんだろう
と考えるのはやっぱまずいのか。世間の目からしたら。
そんなこと気にしなくてもいいのか、気にすべきなのか。
なんかずっとそのことをウダウダと気にしてばかりのここ数年だった。
そしていつも先送り。


ま、いいか。くよくよしても仕方ない。
でも、入院保険には入ったほうがいいんじゃないかと地味に考えるようになった。
いざというとき払えないと困るから。
あ、そう考えると僕はこの先も生きていたいのか。
・・・いや、消去法でとりあえず死にたくはないというだけなのだ。


あー!!


楽しい話題について考える。
先日の披露宴で引き出物のカタログを見ていたら
最後の方に体験コース的なものが並んでいるページがあった。
こういうの、初めて見た。もう、モノじゃないんだ。
「ガラス工芸」「フラダンス体験」「ピラティスレッスン」「パーソナルカラー診断」
などとある中で、「酸素カプセル」というのがあった。


ああ、これいいなと思う。
写真を見てるとなんだか冷凍睡眠のようだ。
全身がすっぽり納まるケースの中に入って、たぶん暗闇の中だろうか。
何もせず30分か1時間か酸素を呼吸する。
そうすれば体内の何かが入れ替わるのかもしれない。
血管の中で、赤血球の中で、澱んで蓄積されていった空気が。少しでも。
荒療治的に、そういうのもたまには必要かもしれない。


マイケル・ジャクソンの豪邸「ネバーランド」には
酸素の濃度の濃い部屋があって、その中で暮らしていたんだったか。
自分専用の遊園地と動物園があって、ペットのオランウータンと共に。
ただの都市伝説か。それとも僕の思い違いか。
マイケル・ジャクソンは借金が払えなくて「ネバーランド」を確か手放した。
動物たちはどうしたのだろう、使用人たちはどうしたのだろう。
マイケル・ジャクソンにとって酸素は役に立ったのだろうか?


荒廃した惑星で酸素は買うものとなる。
貧しき者たちは代用酸素のボンベを背負って暮らしている。
これって何のSFだったか、アニメだったか。
呼吸すら、贅沢なものとなる。
案外数十年後の地球なのかもしれない。
そんなときまで、生きているのか。