鬼束ちひろ『HOTEL MURDERESS OF ARIZONA ACOUSTIC SHOW』

昨日の続き。鬼束ちひろ CONCERT TOUR 2001
HOTEL MURDERESS OF ARIZONA ACOUSTIC SHOW』を見てきた。
本日の公演は2月にライヴ DVD になるとのことで、
会場予約特典で手書きメッセージカードつき。
入場早々グッズ売り場で迷わず予約した。
開演前のホールにはピアノソナタが流れている。


18時開演であまり遅れずに始まる。
東京国際フォーラムのAホールはほぼ満席。
だいたい30歳以上、客層はバラバラ。
以前ここでは Roxy Music の再結成を見たなあ。
直前でキャンセルになったけど、ジョアン・ジルベルトもほんとならここだった。


ステージにはグランドピアノと鬼束ちひろの立つ円形のスペースのみ。
その前方、眠れる森の美女のお城って感じの枯れた植物たち。
鬼束ちひろは緑色のロングドレス。
(2階の最後部近くだったので細部はよく分からず)
ピアノを引くのは前作「Dorothy」のプロデューサーだった坂本昌之
この2人だけ。


01.「Sweet Rosemary」
02.「青い鳥」
03.「everyhome」
04.「琥珀の雪」


『Las Vegas』からの「Sweet Rosemary」「everyhome」が歌われたのは
僕自身はとても嬉しかったけど…
正直、ひどかった。僕が見てきた中ではプロとしてダントツの最低レベル。
声が出てないし、音程も安定してないし、
気まぐれさを前面に出すことでかろうじてごまかしているような。
それよりもナマで見て初めて知ったのは息継ぎの下手さ。
これまで自分の好きなように歌ってきたからなんだろうな。
ちょっと歌っては息を吸い込んで。そればかりが目立つ。
これは、音楽としての完成度よりも
リアルにその場にいたことの嬉しさのみを共有するライブなのだなと覚悟する。
青い鳥ではドレスを鳥の羽に見立てて、クルクル・バタバタとステージを舞っていた。


05.「Time After Time」(シンディ・ローパー
06.「The Rose」(ベット・ミドラー


「Time After Time」は面白いカバーだった。こんなふうにアレンジするのか。
シンガーソングライターって曲・声・歌が分かちがたくなって
存在感としか呼びようがなく、他と比較するのが難しいじゃないですか。
カバーの仕方・距離感でその人の立ち居地や実力が見えてきますよね。
原曲は「Time After Time」なんだけど、全然違って聞こえる。
かといって鬼束節でもない。ここで初めて、「おっ」と思う。


07.「月光」


この曲が一番拍手が大きかった。2000年、デビューして2枚目のシングル。
本人としてはちっとも嬉しくないだろうな。
「30ウン歳の今、だいぶ昔に作った曲だから」みたいなことを言っていた。
その後 Twitter で見てみると、「月光」が唄われてよかったという人と、
「月光」の拍手が嫌だったという人が半々に分かれていた。


08.「蛍」
09.「嵐が丘
10.「ever after」
11.「私とワルツを」
12.「ストーリーテラー


同棲中の男性に殴られて全治1か月だとか
わざとカンペを読みながら歌ったとか奇怪な行動ばかりが聞こえてきて、
今回もどうなることかと思いきや、意外と普通に本編を終える。
「蛍」の頃から歌いっぷりがよくなる。声も伸びて、高い音も出る。
なんだ、最初からこれぐらいで歌えばいいのに、と思う。
しかしそれができないのが今の鬼束ちひろなのか。ムラがありすぎる。
(曲目としては他の場所でやってたスコットランド民謡がカットされていますね)


e1.「New Age Stranger」
e2.「Beautiful Fighter」


アンコールは白いTシャツで。本当に裸足だった。
手製のバックステージパスを観客にプレゼントして、ハグ。
「New Age Stranger」ではステージの上で
行進的足踏みをしながら敬礼をしつつ歌う。
BOOWYの「マリオネット」のサビのフレーズも出てきた。
「Beautiful Fighter」はアコギをかき鳴らしながら。
ギターは9歳年下の妹が運んでくる。「可愛くて大好き」と鬼束ちひろはにんまり。
歌い始める前に「忌々しいEMIミュージック」なんて言ってた。
DVD用に収録しているというのに。カットだな。
(このバックステージパスとEMIはネットで見てると名古屋など毎回のようで、
 即興ではなく毎回の演出のようだ)


実に10年ぶりというツアー。
全体を通して思ったのは「昔はすごかったんだろうなあ」その一言に尽きる。
ただただそのことだけを感じさせられた。
EMI時代のコンサートをナマで見てみたかった。
最後にピックを観客にあげて、坂本昌之と共に「礼!」
ま、これが見れただけでも今日はいいか。
好きなのはやっぱ好きだな。何よりもこの脆さ、危うさが。


それにしても、ほんとわが道をゆくアーティスト。女王様系。
MCのやりとりが面白かった。こんな感じ。
男:「すきだよ〜!」鬼:「お前は知らん」
女:「次のライブは〜?」鬼:「ない」