熊野古道を歩く その10(2/19:小口)


入ってみても誰もいない。裏に回ってみると宿のおばちゃんがいた。
さっそく部屋に案内される。お茶を飲む。大福のような白い餅がやけにうまかった。
一風呂浴びる。もちろん大浴場ではなく家風呂。
しかし、5時間半山道を歩いた後の風呂は最高。
ここのお湯が今回最も心身共に染みた。お湯に浸った。


民宿でジャージを貸してくれた。こういうのが嬉しい。
床の間のある畳の部屋。足の爪が伸びていることに気付いて、爪切りを借りる。
宿の瓶ビールを飲む。つまみは「こういうのしかないですが」と柿の種とねじりあられ。
いや、それで十分。
おばちゃんがこれまでの下着の洗濯もしてくれた。部屋の中に干す。
何とはなしにテレビをつけたらNHKで宮崎の復興支援コンサートが中継されていて、
井手綾香が宮崎のために作った曲を地元の高校の合唱団と共に歌っていた。


今夜の宿泊は僕一人だった。宿帳を見ると昨晩は二人。
先月から遡って数えてみるとそんなに利用されていないことがわかる。
このような小さな民宿だと台風の影響をもろに受けているのだろう。


一人きり部屋の中にいると母の実家で過ごしているような気分になる。
青森を思い出す。
座椅子に座って『紀州』の続きを読む。
僕は小口の橋を渡って村に入った。
再開した箇所では中上健次もまた車で小口の橋を渡るところだった。シンクロする。


ほろ酔いになって、疲れもあって、うたた寝
おばちゃんに起こされて食事。
自分の部屋ではなくて入り口の食堂兼フロントのような部屋で。
宿のおじさんが釣った魚を持って立っている写真や熊野古道の滝を撮った写真が飾られている。
食べ物はなかなか豪華だった。温泉宿的な豪華さというよりは山里的豪華さ。
・天ぷら:海老、しいたけ、かぼちゃ、茄子、玉ねぎ、たらの芽、アスパラガス
・刺身:マグロ、ホタテ、わかめ
・煮もの:冬瓜、人参、椎茸、鳥肉
・山うどと豆腐を炒ったもの
イカと青菜のからし和え
・ししゃもの塩焼き
・鮎の煮付け
・漬け物、吸い物


昼食べてなかったということもあり、ご飯は小ぶりの茶碗に3杯か4杯はおかわりを。
それにしても僕一人のためにマグロを数切れ、近くの店から取り寄せるんだろうな…


さらにビールを2本飲む。
紀州』を読み終えて、『アメリカ ミステリ 傑作選 2003』へ。
読んでいるうちに眠くなる。
歩き疲れて前の晩あんまり寝てなくて、周りはシンシンとするような静けさ。
22時には眠ってしまう。