『チェイサー』

昨晩、TSUTAYA DISCASから届いた『チェイサー』という韓国映画を見た。
新人ナ・ホンジン監督による2008年の作品。
しけたデリヘル店を取り仕切る元刑事が、連続猟奇殺人犯の若者を追いつめる。
行きがかり上そうなったというだけなのに、得体の知れない執念を胸に。
店の女性の失踪が続いて誰かに売り飛ばされたんじゃないか、
黒幕がいるんじゃないかと疑っているところに、また一人。
その小さな娘を助手席に乗せてソウル市街を走る。路地裏を駆け回る。


面白かった。久しぶりに観るべき映画を観たというか。
不条理が描けてるんですね。世の中のありとあらゆる不条理が。
若者に動機はないし、警察の捜査はちっともうまく進まないし、
犠牲者は助からないし、事件を終えて主人公が得るものは全くない。
ただただ何事かに引きずられるかのようにして物事が連なって、
関わったものたちが負の連鎖に飲み込まれていくだけ。
そのドロッとした淀みが、映像として感じられるところがゾクゾク来る。
カフカとはまた別の不条理。


今年初めに2作目の『哀しき獣』が公開されたんだけど、
残念ながら既に終わっている。しまった。
主演の2人が今回でも出演しているみたい。
密入国した中国人が裏社会に巻き込まれるのだとか。
この手の映画は圧倒的に韓国の方がうまいね。
日本だと「情」に流れるものが韓国だと「恨」となるからか。


まあ何にしても僕の中で『オールド・ボーイ』などで知られる
パク・チャヌクは奇抜なだけ、本物はナ・ホンジンではないか。
いつか『グエムル』『母なる証明』のポン・ジュノに並ぶんじゃないかと思う。