昨日の続き。渋谷での『少年と自転車』と
六本木での The Sea and Cake の来日公演の間に挟まった。
丸の内 OAZO の松丸本舗でのイベント「本屋本談 vol.9」について。
『少年と自転車』を見終わって銀座線に乗って、丸の内線に乗りかえて、東京駅へ。
15時開始でギリギリ間に合う。しかし、満席で立ち見。
松岡校長はゆっくり登場してしばらく待たせるかな、と思いきや時間通りに。
既に始まっていた。
今回のテーマは春。
書棚で見かける、手に取ってみる、目次を読む。
本を読むというときには記憶と連想とが関わっている。
個々人とその本が秘めているものと。
それがどのように絡み合っていくか、文脈を形成しつつどのように流れていくか。
読み進める内にそこには方向性のようなものが生まれてくる。
日本人にとってそのひとつは花。
そんな話から始まって、
西行の花鳥風月を惜しむ心、萩原朔太郎が青猫に託したもの、
岡潔が春の泥をこの国の数学にしたいという痛切な思い、
そして泉鏡花の「これでだめなら、日本は闇よ」へ。
最初のうち僕は立って聞いてたけど、
途中から校長の声を聞きつつ本棚の本を眺めていた。
知ってる方たちと出会う度に小声で挨拶する。
この日勢ぞろいしたBSE(ブックショップエディター)の方たちは
すれ違う度にこの本どう? あの本どう? とあれこれ見つけて差し出してくる。
桜にちなんだ本だったり、最近の優れた物語であったり。
(「オカムラ君もノーベル文学賞を目指しなさい」)
結局7冊買った。
*アーシュラ・K・ル=グィン『ラウィーニア』
*J・M・クッツェー『遅い男』
*金井恵美子『ピース・オブ・ケーキとトゥワイス・トールド・テールズ』
*『バカボンのパパと読む「老子」』
*(ちくま文学の森 5)『思いがけない話』
*白洲正子『能の物語』
*ヨッヘン・シュミット『ピナ・バウシュ 怖がらずに踊ってごらん』
最後のはピナ・バウシュの評伝。これは僕が見つけて買いたくなったもの。
フィルムアート社から出ている。
あと、『NARASIA Q』という雑誌の創刊号をもらった。
特集は「ポスト 3.11 ナラジア鳴動」
寄稿者は大澤真幸、中島岳志、王敏など。豪華。
杉浦康平もデザインの話をしている。
これは松丸本舗など限られた箇所での配布となるようだ。
発行は奈良県。
30分の休憩を挟んだ後、「読書人生相談」を受けてみる。
6人のBSEが30分ずつ場を受け持つことになっていて、
僕は次の予定もあり最初の方のセクションに参加。
事前に本にまつわることで「松岡正剛に質問してみたいこと」
というアンケートに記入しておいて、
それを元に松岡校長を囲んで質問に答えてもらうというもの。
そうは言っても今更何を聞こう? って感じで何も思い浮かばず。
(何人か学校関係で知ってる方が、同じ理由で参加をパスしていた)
苦し紛れに僕がした質問は
Q「本は買って持ってる方がいいのか? 図書館で借りるのはどうなのか?」
A「服を着替えるように本も気分や状況に応じて着替えたほうがいい。
だから手持ちのレパートリーを増やすためにも
本は買って持ってて、すぐに取り出せる方がいい。
他の方の質問をかいつまむと
Q「今まで小説ばかり読んで来たのだが、哲学に挑戦してみたい。
しかし、難しいという苦手意識がある。どこから読んでみればよいか?」
A(その方の好きな小説家が遠藤周作だと踏まえて)
「例えば、安土桃山時代に目を向けてみる。その歴史に関する本を読んで、
ルイス・フロイスの日本に関する報告書を読む。
その周辺を取っ掛かりにしてみるとよいでしょう。領域を広げていく。
難しいとはかっこいいものです。
それを自転車のギアのようにツールとして使いこなすといい」
Q「将来編集の仕事に就きたいのですが、どういう本を読めばいいでしょうか?」
A「ジャーナリストがジャーナリズムについて書いた本はたいしたものがない。
他人にインタビューすることは得意でも、自己インタビューは苦手だから。
最近のだと、震災時に新聞社が取った行動を描いた『河北新報のいちばん長い日』
そして、本を出すということがどういうことなのかについて一番面白いのは
シルビア・ビーチの『シェイクスピア・アンド・カンパニー書店』」
Q「私は今、23歳なのですが、その頃読んで感銘を受けた3冊を教えてください」
A「大学をやめて働き出した頃ですね。
鈴木大拙の『禅と日本文化』とジョージ・ガモフの『不思議の国のトムキンス』
そして与謝野晶子の『乱れ髪』与謝野晶子は日本のすごい女性のベスト5に入る。
ガモフは、読んでいなかったら今の私はいなかったでしょう」
このあとBSEの方に案内されて松丸本舗ツアーとなるんだけど、
僕は The Sea And Cake を観るためにそこで店を出た。
校長の「読書人生相談」は19時過ぎまで続いたようだ。