雀荘「つかさ」のカレー


ずっとずっーと、神保町で気になっていた雀荘「つかさ」のカレー。
靖国通り、「新世界菜館」と「ボーイズ・カレー」の間の小道を入ったところ。
表というか地上の看板には
「1日限定30食、昭和30年代の味、コーヒー付きで400円、女性の方もどうぞ」
などとある。どこを取っても心惹かれる。


しかし、地下にある雀荘というところがさすがに引っ掛かり続けて。
横で麻雀を打っている側で煙草の煙を吸いながら食べるんじゃないか。
昼間っから打ってる人たちってのも怖そうだ。いろんな意味で。
そもそも値段相応に100円のレトルトカレーを温めただけなんじゃないか。


昨日の昼、後輩を伴って意を決して入ってみた。
古びた雑居ビルの薄暗い地下の奥。ちょっとドキドキした。
11時半の開店すぐに入ったので僕らの他に客は誰もいなかった。
あまりの安さにもっと混んでるんじゃないかという心配もしたけど、
全然そんなことはなかった。
食べ終わっても他に客は初老の男性、ひとり。常連さんかな。


ほんと寂れた、どこにでもある雀荘
壁には色褪せた点数計算の表。
店は最初、40代と思われるおばさんがひとりきり。
そこに60代と思われるおばちゃんがパートで加わる。
昼は麻雀をやってなくてカレーのみ。
雀卓に白いテーブルクロスが掛けられていた。


冷たいお茶をもらう。
大盛りが500円というのでそちらにする。
しばらくしてカレーが出てきた。
「昭和30年代の味」をうたうだけあって、ごく普通のお家カレー。
というか、お母さんのカレー。
ジャガイモとニンジンとタマネギと豚肉。
ルーは辛くもなく甘くもなく、ほどよいとろみ。
食べてみたらなんだかホッとした。それだけでおいしく感じられた。
これだよ、これ! と嬉しくなりながら夢中になってペロリ。


いや、実際これはなかなかいいんじゃないかと思う。
カレーの聖地:神保町は手の込んだカレーばかり。
それはそれでおいしいんだけど、時々どこか空しくなる。
「研究する」とか「極める」とか「味を守る」っていうのがなんだか疲れてくる。
そんなとき、サッとつくってパッと食べる、
レシピもなくてただいつものっていうだけの素朴なカレーが妙に恋しくなる。
懐かしい場所、心のふるさとというか。
探してみると、全然見つからないんですよね。そういうカレーが。


はやってないのかな。もったいないな。
おいしいのにな。
でも、誰にも知られず秘密にもしておきたい。
とっておきの店のまま。


(なんにしても給料日前は自然と足が向きそう)