『ネムルバカ』

ネムルバカ (リュウコミックス)

ネムルバカ (リュウコミックス)


昨日に引き続き。
昨晩は有楽町の日劇に『ファミリー・ツリー』を見に行ったあと、
帰って来てホッピーを飲みながら木曜に借りた『ネムルバカ』を読んだ。
http://www.amazon.co.jp/dp/4199500758/


作者の石黒正数は『それでも町は廻っている』という作品がヒットして
アニメにもなったようだけど、僕は全く知らなかった。


ネムルバカ』は東京のどこかの女子寮に住む2人が主人公。
先輩はバンドをやっていて、後輩はやりたいことが見つからず古本屋でバイト。
共に金はなく、昼メシにも困るなかでウダウダと酒を飲んでクダを巻くという毎日。
そんななかにひっそりと忍び込む日常の焦燥感。
それが、先輩がいきなりメジャーデビューして「えっ!?」という展開に。


重くもなく軽くもなく淡々としつつ、笑えて泣ける。愛おしい漫画。
先輩が突然部屋を出て行くことになり、段ボールに荷物を詰め始める。
2人で過ごす最後の夜。こんなセリフを言う。
「後でコンビ二行って目に付く物手当たり次第買って 朝まで飲もうな」


そしてもう一箇所引用。先輩のバンドの曲「ネムルバカ」の歌詞。
僕の中の永遠に18歳・19歳の部分、その琴線を揺さぶる。
ネムルバカ ボクはまだ大丈夫? 答えづらいだろうから 今聞いてるんだよ」
「折り合い付けようか 開き直ろうか 考えたいけどあんまり時間もないみたい」

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続けて、『響子と父さん』
こちらは日々の暮らしにひそむユーモアというものをもっと炙り出している。
タイトルの通りこの2人が主人公でそのズレたやりとりを描いてるだけなんだけど。
http://www.amazon.co.jp/dp/4199501673/


この、職業イラストレーターである響子の妹が、
その後音信不通となった『ネムルバカ』の先輩で、とリンクしている。
いわゆるシェアード・ワールド
独立した作品間で時代背景や登場人物などを少しずつ共有する。
片方の主役がもう片方の脇役として登場したり。
先日の編集学校の集まりで紹介されたときには、
吉田秋生がその達人であるとされた。
BANANA FISH』の外伝のつくり方なんかもそうですね。

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ネムルバカ』には「駄サイクル」という言葉が出て来る。
若い自称アーティスト、自称ミュージシャンが
仲間内のサークルの中だけに閉じて
適度に褒めあったりするのに居心地のよさを感じて、
それ以上のことを求めなくなってしまう。
傷つくことが嫌で、なんだかんだ理由をつけてその外に出て行くのを拒む。
…ああ、そうか。僕が今いるのもここなのだ。皆がそこにいるんだ。
そして諦め気味に日々を生きている。


先輩は抜け出そうとする。後輩はずっとその中にいる。
この2人がひとつ部屋にて過ごしている。
後で読み返したとき、その瞬間のそれぞれに怖さのようなものも感じる。