夜の散歩

夜の散歩。
会社から帰って来て、近くの図書館に本を返しに行く。
19時過ぎなのに空が暗い。夏はもう終わるのだな。
夕方はまだ蝉が鳴いていたのに、今はもう鈴虫の声。
こんなにたくさんの鈴虫、どこにいるのだろう?
声はすれども姿は見えず。
星は見えない。月は半月にもう少しか。


駅へと向かう人。駅を出て家路につく人。
歩く人。自転車に乗る人。
自転車のライトをつける人、つけない人。
スマホや携帯を眺めながら歩く人。疲れきって無表情に歩く人。


家々の明かりはついているのに、どこもかしこもひっそりとしている。
リビングと玄関だけ。2階はどこも暗い。
金曜の夜。意外と家族団欒が多いのかもしれない。


ふと気がつく。
東京って家の前とか道ばたで花火をしないもんなんですね。
10数年住んでようやく、何が足りないのか分かった。
この前青森に帰ったときに、普通に見かけた。
東京だと危険と思われるのか、公共のマナーに反するのか。
バケツに水を汲んでおけばいいというものでもない。
公園でも花火をしている親子っていないよね。
なのにあれだけコンビ二で売られている。
どこで行なわれているものなのか。
河原なのか、海辺なのか。


閉館間際の図書館はひと気もなく、明かりだけは静かに、白く眩しい。
閲覧室にポツリポツリと人がいる。
受付に本を置いて帰ってくる。


同じ道を引き返しているはずが、なぜか全然違う道のように感じられる。
月夜の照らし方が異なるのか。
そもそも道というものがそういう性質なのか。
行き交う人々もまた、違って見える。


アパートに戻ってくる。
そこから先は、部屋の中でいつも通りの夜を過ごす。