「絵本で哲学する」

昨日は「松丸主義の日 vol.2」ということで顔を出す。
学校関係で知っている人に何人かお会いする。
http://www.matsumaru-hompo.jp/?p=3487


いつもお世話になっているBSE(ブック・ショップ・エディター)の方が
「絵本で哲学する」という新しいワークショップを始めるとのことで、参加する。


元々はフランスで出版されて今、世界19ヵ国で翻訳されているという
「はじめての哲学」シリーズの1冊『哲学してみる』を題材とする。
この日は担当された編集の方もオブザーバー参加。
http://www.amazon.co.jp/dp/4418125000/


子どもたちのために分かりやすく、「哲学とは何か」を解説する。
そのために対立する語を提示する。
その違い、その間から生まれてくるものを絵本の読み手がそれぞれ考える。
・一と多
・有限と無限
・存在と外見
・自由と必然
・理性と情動
・自然と文化
・時間と永遠
・わたしと他者
・肉体と精神
・能動的と受動的
・客観的と主観的
・原因と結果


ワークショップはこれらキーワードが書かれたポストカードを
1枚裏返しに引くところから始まる。
僕が引いたのは「無限なもの」このキーワードに合う一冊をまずは書棚から探す。


無限。うーむ。その気になると
抽象的な概念は皆、無限に向かうように思えるし、掴みどころがない。
ボルヘスの「バベルの図書館」(『伝奇集』所収)だろうか。しかし当たり前すぎる。
パッと目に付いてこれか、と思ったのがジョルジュ・ペレック『さまざまな空間』
http://www.amazon.co.jp/dp/4891764953/
真っ白い表紙の余白の多さが無限っぽいし、
無限を区切ることで生まれるのが空間だと思ったんですね。


時間が来て、集合。12人が参加。
まずは自己紹介と、『哲学してみる』の表紙のイメージを語る。
真っ青な部屋に透明な丸い金魚蜂のようなものが置かれていて、
熱帯魚(ニモ?)が空中に浮かんでいる。
それを不思議そうに眺めている全身タイツなのか潜水服なのかを着た少年。
僕は金魚蜂が既存の哲学という枠組みで、
魚が、その哲学によって伝えたいことが
解き放たれた状態にあることなのではないかと思った。


次のステップでは、選んだ本に対立する内容の本を選ぶ。
空間ときたらそりゃ時間だよなあと、その辺りが集まっている棚へ。
レヴィナスの『時間と他者』だろうかなどと悩んだ末に
その名もズバリ『時』(渡辺慧)を。
http://www.amazon.co.jp/dp/4309245730/


集合時間が来て、店の一角へに戻る。丸椅子に座って選んだ本を紹介しあう。
先日読んだジョーゼフ・キャンベル『神話の力』では
永遠と時間とは別ものだとあったことについて話す。


そして次は議論。絵本の「自由と必然」の章を開いて、
「必然を考えることなしに自由は存在するのでしょうか?」
この問いかけを皆で考える。
存在する・しない、6人ずつに分かれてその理由を考える。
僕は「存在しない」のグループに入って、
必然とは選択肢がひとつしかない状態であって、自由は選択肢が複数存在すること
という立場から必然と自由とは裏返しの関係にあると話す。
必然とは与件のことであって必ず必要とされる、
必然とはルールのことだ、様々な意見が出る。
ある方は全ての運命は必然であって、後から振り返ると偶然は存在しないとも。
話しているうちによく分からなくなってきて、
意見をまとめて発表したはずがいつのまにか僕は
「必然を考えることなしに自由は存在する」の立場となっていた。
…哲学を議論するのは難しい。


最後に、これら2冊から導きだされる3冊目を選ぶ。
空間、時間と来れば言葉か意識だろうと僕は
ジュリアン・ジェインズ『神々の沈黙』を。
右脳には神々の声が、左脳には人間の振る舞いが生まれ、そこから意識が…
http://www.amazon.co.jp/dp/4314009780/


集合写真へ。
僕らが固くしていたら松岡校長がカメラの後ろに立って、おどけてVサインを。


当初1時間だった予定が、2時間へ。
その後『哲学してみる』と『さまざまな空間』を買って赤坂見附へ。
この日17期:花伝所が師範代試験の面接。
終えた何人かと落ち合って、遅くまで飲む。