他の地方でもあったんじゃないかと思うんだけど、年に1回、
小学校や中学校に小さな劇団が回ってきて体育館に集まって皆で観るという。
最初の年、先生が「東京から来る」と言うから
それはすごい立派なものが来るんだろうと思っていたら
役者が3人か4人、スタッフが1人か2人の小さなお手製の劇団で、
がっかりした覚えがある。劇団四季みたいなのを想像していた。
毎年、違う劇団が来ていた。
ある年のことをなぜか今も忘れずにいる。
主役のきれいな女性。今思えば30代後半か。同じぐらいの男の役者が2人。
この3人が入れ替わり立ち代わり衣装を着替えて演じる。
音楽兼照明の裏方が1人か。
何が演じられたのかは覚えていない。最初の劇があって、
女性による詩の朗読があって(そこのところが記憶に残っている)、
もうひとつ劇が演じられたように思う。
ボロボロの白いライトバンが駐車場に1台停まっていて
あれで全国か東北地方を回っていたのだろう。
青森市の教育委員会に呼ばれて
日替わりで青森市の各中学校を回っていたのではないか。
日々旅しながら子どもたちの前で劇を上演するということ。
そこに使命感を感じていたのか、それとも生活のためだったのか。
理想を求めて演劇の世界に飛び込んだはずが、いつのまにかそうなっていたとか。
そうだとしたら切ないな。子どもに見せるものとしては。
いや、そんなことはないはずだ。そう信じたい。
どちらにせよ、食うや食わずの生活だったのではないか。
大道具の都合もあるからレパートリーは限られていて、
毎日毎日違う体育館でそれを繰り返す。
詩の朗読を途中に挟むというのはそこのところを意識した工夫だったのだろう。
彼らは今、どうしているのだろうか。
劇団は解散してしまったのではないかと思う。
特に根拠はない。しかし、この世界はそういうものなんじゃないか。
末端にあるものは生きにくい。
続けているのだとしたら、応援したい。