何かの終わりの部分だけ書いてみる

人生が旅に例えられるのなら、日々の暮らしも小さな旅になるんじゃないか。
私はそんなふうに思って生きていくことにした。
毎日同じ駅で下りる電車も違う一日へと連れて行く。
同じ日が繰り返されるなんて、ありえない。
私だけのささやかな幸福とはいえ探し求めるものがあるのならば、
向かうべき場所があるのならば立派な旅人になる。


そんな私は今日はどこまで来たのか、
今ここがどこなのか、日誌をつけることにした。
3丁目のパン屋さんが今日で3回目だとしても
その途中で見かける風景は少しずつ違う。
光の傾き、風の匂い、聞こえる声。感覚を閉ざしてはいけない。
子どもたちが手をつないで歩いている。手を離して風船が飛んでいく。
あの風船はどこに行くのか。私は男の子と一緒になって空を見上げる。
泣きそうになった女の子の頬を、しゃがんでハンカチで拭いてあげる。
笑ってほしい。そんな出会いがいつだってある。


いつだって旅の途中。
四季があって、誰かとめぐり会って、それはどこまでも続く。
晴れた日があって雨の日もあって。
鼻唄を歌いながら、お気に入りの傘を差して私は歩いて行く。
そんな私を見かけたのなら、あなたとともに旅のひと時を分かち合いたい。
行き先が違っていても一瞬だけでも触れ合いたい。
そこでさよならになってもいい。
あなたもまた一人の旅人なのだから。


ハローハロー。こんにちは。聞こえますか?
私は今、ここにいます。
あなたは今、どこにいますか?