オノクラ汁講その4

(2/16(土)昼)


11:00 いったん外に出る。待ち合わせは12時。
時間が多少余って「倉敷アイビースクエア」に戻る。
倉敷川沿いの道端にペンダント売りが店を広げている。
切子格子や漆喰で文様を形作った海鼠壁の町屋の中に証券会社があって、
「当面の相場見通し」が黒板に白のチョークでびっしりと記載されていた。
昔からそのような慣わしなのだろう。曰く
「二月六日の日経平均株価は大幅上昇し
 一万一四六三円と二〇一〇年四月につけたリー
 マンショック後の高値一万一三三九円を
 上回った」


アイビースクエア内の児島虎次郎記念館へ。
この人は洋画家として有名らしいが僕は正直よく知らず。
うまいけど何かが足りないという印象を持つ。
日本人らしからぬカラフルさがあるが、陽気なわけではない。
オリエント室へ。
先史時代のイラン:彩文土器鉢、牛頭、羊形注口土器、
地母神像、魚形土器壺、獣頭飾付双口ランプ。
エジプト:ファラオ頭部、スフィンクス、ステレ、
女神イシスまたはネフティス像、ミイラ頭胸部包被
ペルシア:吹ガラス蓋付骨壷、切子ガラス手付壺、黒褐地花文散鉢、
青釉刻線文面取壺、青釉銀化綱文六耳付大壷。
アイビースクエアに宿泊するともらえる倉紡記念館はもっと駆け足。
日本の繊維産業の歴史、メセナの歴史、地域に根ざした大企業の歴史。
その一方で大原社会問題研究所を立ち上げて運営していたところが気になった。


12:00 待ち合わせ場所である大原美術館入口横の喫茶店エル・グレコ」へ。
冬なので枯れているけど蔦で覆われている。
昨晩のKさんを初めとして既に4人集まっていた。
今回初めてお会いする方もいる。僕はココアを飲む。
もうひとり東京から到着して、全員揃う。
駅前の方に歩いて「とんかつ梅の木」へ。
http://misokatsu-umenoki.com/
(Kさんはその間僕らの分の「川舟流し」を予約しに行ってくれる)


「梅の木」は予約なしでいけるかと思いきや、かなり混んでいた。
店の中で2組待っていて僕らは外で待つ。行列が長くなっていく。
結局30分ぐらいは待っただろうか。
僕以外はみそかつの定食にして、僕は1,500円の梅の花というセット。
みそかつとカキフライが2個、鶏つみれの紙鍋、たこの煮物、
穴子の茶碗蒸し、刺身はぶりだったか。その他に小鉢がいくつか。
油で揚げるのではなくオーブンで焼き上げるという独特なとんかつは
見た目が揚げ饅頭。なのに食べてみるとしっとりふわふわ。
なるほど、うまい。
夜に泊まる「安部旅館」から電話があって、到着時刻を伝える。


川舟流しは定員が5名ということで6人の僕らは2組に分かれる。
僕はKさんと共に先に 14:30 の方。
30分に1回の運行で休みの日は予約がすぐ埋まる。
待ってる間、1時間ほど本町通りの倉造りの町屋をそぞろ歩く。
昨晩飲んだ「荒走り」の「森田酒造」のご主人が全国から集めた
おいしいもののセレクトショップ「平翠軒」は
新米の缶詰から千房の冷凍オムソバまでこれでもかこれでもかと
狭くて歩けなくなるぐらいに珍しい調味料や各地の特産品がぎっしりと。
http://www.heisuiken.co.jp/


昨日僕が入った古本屋「ムシ・ブンコ」に皆が入っている間、
僕は向かいの小さなギャラリー「クラシカ」へ。
http://www.mapple.net/spots/G03301085104.htm
倉敷の写真家のモノクロ写真を1枚200円で売っている。
今はなき鉄橋の上を走る SL など。昭和が写っている。
店を出ると神社から出てきたお嫁さんが。
倉敷で結婚する人は川舟流しを貸し切って
事前に記念写真を撮ることが多いという。
暖かくなるとそういう光景をしばしば見かける。


もうひとつ入ったのが紙系の小物屋「如竹堂」
http://nyochiku.906.jp/
以前は掛け軸をつくる店だったようだ。
「倉敷意匠計画室」と名乗っておしゃれなマスキングテープをつくったら
それが有名になった。幾何学的な紋様もあれば町屋を模したデザインも。
店内入ってすぐに変り種の紙風船
金魚、くらげ、アザラシ、メロン、トマト、スイカなど。
折り紙、便箋、お年玉袋から請求書、領収書まで。
日常生活で用いる紙製品がかわいらしく生まれ変わっていて、
女性たちはみなあれもこれも欲しくなったようで
目移りしながらたくさん買っていた。
僕は『ラジカセのデザイン!』という本に心ときめいて買ってしまった。
1970年代や1980年代のレトロで多機能で武骨なラジカセの数々。


舟乗り場へ。前の舟が戻ってきたら乗ることになる。
待っている間、Kさんと星野仙一博物館の話をする。
故郷に対して義理堅い人であって、楽天のキャンプを倉敷で行ったり、
オールスターゲームを一試合倉敷で行ったりしたという。


舟に乗る。編み笠をかぶるかと聞かれて、もちろんと。
かぶったところを船頭さんに写真を撮ってもらう。
前後を区切られたL字型の川を15分ずつ往復して計30分。
それぞれ200mもないだろうか。川幅も5m程度と小さい。
船頭さんは後ろに立ってのんびりのんびりと漕いでいく。
その間、あの柳は、あの桜は、あの階段はと川沿いのあれこれを解説する。
NHKの朝ドラ「てっぱん」の撮影がここで行われ、
舞台となる岸和田とするために町屋の並ぶ通りをお化粧したのだという。
(この後、尾道でも「てっぱん」の撮影にちなんだ
 あれこれを見かけることになる)
大原美術館の向かいが倉敷紡績創立者の一族である大原邸。
豪勢なお屋敷なんだけど今もまだ住んでいるとのことで非公開。
その隣に(何代目だったか忘れたが)奥さんのために建てた屋敷が
和風と洋風で二棟。昭和23年には昭和天皇が宿泊された。
その際、屋敷の前に掛かっていた石橋がふさわしくないと
下流に掛かっていたものと渡し換えたのだとか。
今あるものは児島虎次郎が欄干の龍を描いている。
この大原邸だったか、奥の井上邸だったかが270年という歴史の古さ。


舟に乗っていると寒く、下りて代わりに女性たち4人が乗り込んで
編み笠をかぶった写真を撮ると温かいものを飲もうと「倉敷珈琲館」へ。
http://www.kurashiki-coffeekan.com/
有名な店のようで混んでいた。
琥珀の女王」が名物とウェイトレスの方が言うんだけど、
アイスコーヒーだったのでさすがに今は無理。カフェオレにする。


女性たち4人が下りてきて、15:30頃。
駅へと向かう。そろそろ尾道に行こうと。
コインロッカーに預けた荷物を出して、
15:56 - 16:56 山陽本線:下関行き、1,110円。
2人がけの席が向かい合わせて4人掛けにできるタイプの車両で
話しているうちに1時間はあっという間ですぐ到着する。