オノクラ汁講その10

(2/18(月)昼)


13:50 リュックサックを背負い、瀬戸田行きのバスに乗る。
同じ時間に因島:土生港行きも同じ停留所に来ることになっていて紛らわしい。
たまに行き先の表示を間違えて走ることもあるじゃないですか。
大勢が乗り込んで、最初あれかと思わず乗り込むところだった。
瀬戸田行きは後から遅れて来た。
直通ではなく普通に市民の足。年老いたおばあさんたちが駅の近くで、
そして尾道市民病院で大半が下りていく。
バスは尾道大橋に近づいて
お台場のレインボーブリッジのように回転しながら高さを上げていく。
橋に入って灰色の空の下、灰色の海の上をバスはまっすぐに駆け抜ける。
なぜか僕は何かを突き破ってまた突き抜けていくように感じた。
島から島へ、というのがまだ馴染みない。
四畳半ぐらいの小さな島がポツリポツリと浮かんでいる。


因島をしばらく走ってから高速に入ったのだろうか。
途中のバス停がなくなる。因島行きが別にあるからだな。
生口島へ。普通に開けた住宅街のようでもあり、古びた漁師町でもあり。
潮風にさらされて無数の細かな穴が開き、
そこに目に見えない砂が詰まっているような。
その重みに耐えかねて柱や壁がわずかに歪み出しているような。
月曜の14時台は子どもたちの姿もなく。風景が淡々と通り過ぎていく。
そのところどころに公の施設なのか
直線のコンクリートでできた建物がニュッと広がっていたり
太陽光発電のパネルが並んでいたり。


終点の瀬戸田港で下りる。僕とおばあちゃんがひとりだけ。
運賃はちょうど1,000円。バスはすぐにもどこかへ走り去ってしまう。
今晩の宿「つつ井」へ。
http://www.tsutsui.yad.jp/
尾道のMさんも広島のSさんも今回薦めていた。
豪華なホテルを想像していたら、着いてみると小さな地方旅館だった。
フロントのおばちゃんに
「せっかく来てもらったのに雨で…。本当なら景色もいいのに」と。
話し好きな仲居さんは韓国か中国か来たのか。
日本人ではない、というのは初めて。まあそれもあり。
生口島はレモンの島ということで
お茶の代わりにレモンの輪切り入ったホットレモンが。
これがなかなかおいしい。売ってるなら買ってもいいかも。


荷物を降ろすと小雨の降る中、
自転車を借りて日が暮れるまでちょっとばかり瀬戸田観光を。
まずは平山郁夫美術館へ。一応。
正直よさが分からない。単に好き嫌いという意味で。
http://www.hirayama-museum.or.jp/
建物がものすごく立派。市や県が運営しているのだろうか。
入ると地域の小学校の絵画コンクールの入賞作品をたくさん飾っている。
これがもうだめ。それらの絵自体は元気があっていいんだけど。
なんというか芸術というものが何かにすりかわっているようで。
その次はリトグラフの複製、限定何百部値段いくらが並んでいる。
結局のところ一番よかったのは
唐代の魔除けだった「鎮墓獣」の像、一対だったな。
若いころの作品、特に子どものころの絵葉書や
「動物幻想」「曽我兄弟復讐之図」といった作品はいい。
ゴーギャン風の「家路」や「生家付近の人々」というスケッチの連作もいい。
しかし、例のポヤーンとした画風を確立して
敦煌」「中尊寺」となってくるともう肌に合わず。
「曉春 橘富士 大下図」など細かな線でさっと書いてさっと着色した作品は
生野菜のサラダのパックみたいでいいんだけど。
とか何とか言いつつ、生まれ故郷の瀬戸田を描いた絵葉書を買ってしまう。