「2013/03/11」という日はこれまでのいくつもの
「2011/03/10」のように過ぎ去っていった。
朝起きて、職場へと向かう。
丸の内線の中は何が変わるわけでもない。
同僚といつも通り話して、資料を直して、昼を近くの中華料理屋に食べに行って。
打ち合わせをして、定時を過ぎて帰ってくる。
周りで誰かが黙祷をするわけでもなく、サイレンが鳴るわけでもなく。
ニュースの向こう、ブラウザの向こう側だけが
「震災から2年」の月日が経っていた。
ここは時間が止まってしまったままだ。
僕もまた、時間を止めてしまっていた。あの日が来ることのないように。
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気がついたら15時を過ぎていた。
そろそろだっただろうか。
そう思ってブラウザを立ち上げてみたら、「14:46」だった。
そうだったのか。
地震が起きた。二度、揺れた。
一度治まって、さらに強い揺れが来た。
何が起きているのだろう?
実は大変なことになっているんじゃないか?
事の重大さに気づいて時計を見たのが15時過ぎ。
そういうことだったんじゃないかと思う。
外に出た。人々が訳も分からず寄り集まっていた。
ビルの屋上のクレーンが鉄骨を吊り下げたまま、
フラフラと不安定に揺れていた。
電話ボックスに何人か並んでいた。
僕も並んで青森の母に電話をかけた。無事だった。
目の前を救急車が通り過ぎていった。
九段会館に向かっていたのだと後になって知った。
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昨日は神保町から荻窪まで歩いて帰ることを最初考えた。
4時間の道のり。
西へと向かう人の流れに混ざってノロノロと進んでいく。
携帯が通じない。Twitterをずっと見てる。
デマが飛び交い始める。善意と思っていたものが混乱をきたす。
何が起きているのか、明日からどうなるのか、分かっていた人は少なかった。
多くの人はそこで数ヶ月の非日常的な日々を過ごして
また「2011/3/10」へと戻っていった。
どうしようかと思う。ひとりきり、歩くか。
家に帰ってやることがあったから、普通に丸の内線に乗って帰ってきた。
目を背けて、「2011/3/11」という日がどこにも存在しないかのように。