My Bloody Valentine 「m b v」

My Bloody Valentine の新作「m b v」が2月に突如発表された。
Official Siteで販売された途端、サーバが落ちたとか
http://www.mybloodyvalentine.org/
YouTubeで全曲聴ける、売る気がないのじゃないかとか
あれこれ聞いた。
https://www.youtube.com/user/TheOfficialMBV?feature=watch


残念ながら昨月の来日公演はチケットが取れなくて見にいけなかった。
余りにも轟音が大きすぎて耳栓が配られたのだとか。


実に22年ぶりの新作。
1991年の2作目『Loveless』は僕もリアルタイムに買って聴いて、
いまだにことあるごとに聴き続けている。
何重にも重ねまくって、たゆたうようなギターノイズの海。
たちまちのうちに新しいジャンルを確立し、
フォロワーがたくさん生まれた。
しかし、『Loveless』を超える作品は生まれなかった。
首謀者ケヴィン・シールズでさえ沈黙を余儀なくされた。
新作「SALAD」が出ると広告を見かけたけどそれっきりとなったり、
EP 集が出ると噂されてやはりそれっきりとなったり。
ドラムンベースのアルバムを作ってお蔵入りしたというのも有名な話。
(それが「SALAD」だったのかは思い出せず)


ケヴィン・シールズPrimal Scream にギタリストとして参加し、
パティ・スミスと共演したアルバムをつくったり
ロスト・イン・トランスレーション』のサントラを手掛けた。
常にシーンのどこかでその巨体を見かけたけど、
My Bloody Valentine の新作だけはいっこうに出る気配がなかった。
それが昨年の旧譜リマスタリング再発を経て、遂に。


「m b v」が CD になって販売されたのを
今日ようやく iTunes に取り込んで iPhone で聞いた。
入手してすぐ、ではなくてしばらくほったらかし。
正直あまり期待していなかった。


で、まあそんな感じ。
9曲が3曲ずつのパートに別れていて
最初の3曲は「Loveless」のアウトテイク集のよう。
発売されたのが1992年でも2002年でも2012年でもおかしくないような。
全く変わらない音に歪んでる時間の凄みを感じた。
本気で止まっている。
she found now - m b v - my bloody valentine
https://www.youtube.com/watch?v=rBKjhgHGVZs


次の3曲がミニマルなエレクトロニカ
アンビエントでさえあるような。
ギターが全く鳴っていなかったり。
しかしこれを新基軸と呼ぶのは辛い。
if i am - m b v - my bloody valentine
https://www.youtube.com/watch?v=VJ0axgeNbWU


最後の3曲で「おっ!?」と思う。
性急で強迫観念的なビートの繰り返しに
音の塊がどんどん乗っかっていく。これだよ、これ。
でも本当に聴きたかったのはさらにこの先の音。
どんな風景が待っているのだろう?
期待だけさせてやきもきする。
wonder 2 - m b v - my bloody valentine
https://www.youtube.com/watch?v=pWyRfqfEC2s


僕はこれをマイブラの新作とは捉えず、
来るべき新作のアウトテイク集と思うことにする。
例えそれがさらに22年後になるとしても。

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話し変わって、New Order のアウトテイク集
「Lost Sirens」がなかなかよかった。


2005年の「Waiting for the Siren's Call」の頃に
同時にレコーディングされたみたいで
本当はアウトテイク集ではなく、続編みたいなものか。
しかし近年バーニーとフッキーの仲がこじれて
このような中途半端なリリースとなってしまった。


なのにこれが地味にいい音鳴らしてんですね。
こちらもまた90年代からずっと
時計が止まったかのような
毎回似たような曲、似たような歌と演奏なのに
なぜか音の感触が瑞々しい。


なんだか対照的なものを感じてしまった。