「愛、アムール」

引き続き、昨日観た「愛、アムール
ミヒャエル・ハネケ監督の最新作にして
前作「白いリボン」に引き続いて2本目のカンヌ、パルムドール
史上初の3本目の受賞はミヒャエル・ハネケか、ダルデンヌ兄弟か。
今村昌平監督は亡くなったし、エミール・クストリッツァ
 フランシス・フォード・コッポラビレ・アウグストは、まあないと思う)


楽家の老夫婦。妻が発作で倒れ、右半身麻痺で車椅子の生活となり、
2回目の発作で寝たきりとなる。献身的に支えようとする夫。
妻はうわごとを言うようになり、意識は切れ切れになる。
そこで夫が取った選択とは… (←こんなふうに書くと分かっちゃいますね)
話はこれ以上ないぐらいに単純。
冒頭以外は全編、ふたりの住むアパルトマンの中。
そこに娘夫婦、かつての教え子、近所の親切な住民、看護師、
開けていた窓から迷い込んできたハトが出入りする。それだけ。
白いリボン」や「隠された記憶」など過去の映画の要約しようのなさ
からすると不思議なくらい。これが今回の「仕掛け」?


もちろん面白いし、よくできている。味わい深い。
でも。ハネケ監督の作品をずっと観てる人からすると薄味で物足りないかも。
「円熟? 新境地? この人にそれはあり?」というような。
フツーにいい映画。ラストシーンを観ると確かに
「愛って、こういうことだよなー」と妙に納得してみたり。
ちょっとした言葉のやりとりや役者の立ち位置や光の当たり具合で
現代に生きる人間の人生の機微を描き出す。
今度こそ、ハネケは巨匠となった。


ずっと室内だけで撮っているとしても
壁に掛けられていた何枚かの古典的な風景画を大映ししたりといった工夫が
ここでは技ありなんだろうな。映像に変化をもたらしつつ、
でもやはりここにはない、行くことのできない場所。
そこはかとなく漂う、諦めや絶望。
その風景が美しいだけになおさら。
こういうところにハネケの冷徹な底意地の悪さを感じる。
そしてファンとしてはゾクゾクする。


話は変わって。
予告編で流れていた YKK AP の企業広告が良かった。
http://bcove.me/16ror07g
映画の中の「窓辺」を切り取る。期待があり、出会いがあり。
「窓をつくることは、窓辺をつくること」というコピーが秀逸。