『野球太郎 No.004』

昨晩は『野球太郎 No.004』発売記念のトークイベントで恒例の神保町三省堂へ。
この日は村上春樹の『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』の発売日で
三省堂には恒例の本を積み上げたタワーが正面入り口の奥に聳え立っていた。
過去最高の大きさだという。外の看板も「村上春樹堂」となっていた。
異例の朝7時オープンで販売開始。
http://www.asahi.com/culture/update/0412/TKY201304110511.html


これまでよりも早く19時より。
今までで最も小さい会場でそれも半分ぐらいしか最初埋まらず。
大丈夫かな? と思っているうちに
遅れてきた人たちが少しずつ入ってきて結局は満席になった。


今回は1時間ずつ前半後半分かれていて、
前半は「データスタジアム」の方が豊富な試合データをモニタに映しながら
今年のペナントレースを占った。
巨人はやはり安部と坂本でしょうか、
広島は1番、2番の出塁率がいいといった一般的なところから始まって
阪神のクリーンナップは今打ててないが、
WBCで活躍した鳥谷の選球眼はセパ通じてトップで出塁率が高く
2ストライクからボール球に手を出した割合が… といった感じで。
バッターごとにグラウンドのどの方向に打球が流れていったかの統計を
サーモグラフィーのように表わしてみたり。
一番印象に残ったのは、阪神は7回が終わった時点で負けている試合は
ここ百何十試合ずっと負け続けているというもの。(引き分け除く)
終盤で逆転勝ちってここ数年ない!?


あと、この「データスタジアム」の解説の方が
スーツにネクタイで普通にITエンジニアのようでいて
昨日の試合だとあの球が、あの試合だとこの場面がと、ごく普通に詳細に話していて
いつどこで試合の様子をキャッチアップしているんだろうというのが気になった。
周りの野球ライターの方たちと同じで、好きだと自然に集まってくるんだろうな。
あと、1球ごとの球種とか打球とかのデータって誰がいつ入力してんだろう?
厖大な作業になりそうだけど。
調べたらやっぱバイトを雇っているんですね。
http://www.datastadium.co.jp/corp/expert/guide.html#bb


後半はお待ちかね、流しのブルペンキャッチャー安倍昌彦氏。
やはり炸裂していましたね。いろんなものが。抱腹絶倒の1時間でした。
最初の30分は次のドラフトの顔のひとり、宮崎日大の甲斐翼の投球フォーム。
彼はベルトから上(つまり上半身)だけで投げていて、
だから投げるときは足が開くのではなく、地面を下に蹴っている。
だからマウンドは固い方がよく、メジャーリーグのピッチャーみたいだ。
逆に日本的な投げ方というのは足を思いっきり前に出して
体全体をスライドさせるタイプが多かった。だから土は柔らかい方がいい。
なるほど。


次は今年さっそく活躍し始めたドラフト上位選手ということで
ヤクルトの小川投手。小柄ゆえに合理的に力を使おうと
投球時に左肘をひねるようにして体が開かないようにし、
右足は垂直近くまで上げる。
その筋肉は固く、投球ポーズのまま止まってもらったら
カチカチでビクともしなかったという。
インタビューしていて桑田以来の殺気を感じたのだとか。
とにかく笑おうとしない。目が本気を通り越している。
ブルペンキャッチャーとして球を受けたあとだったから
身を乗り出して話してくれたけど、
これが普通にただスポーツライターやキャスターが来て挨拶して
さあってんで始めたらここまで話してくれただろうか? と。
ここもまた人間というものの本質を突いた話だった。


もう一人のルーキー楽天の則本のスライダーの話のあと
またヤクルトに戻ってキャッチャーの中村悠平
高校時代の監督曰く野球オタクで、野球のことならいくらでも話し続ける。
人がいいんだけど、この知識をひけらかすようだったら煙たがられるだろうねと。
しかしプロになったからといって天狗にならず、
客観的に一人の選手として自らを捉えてどうやったら向上できるか
(プロにしては珍しく)考える力があるるという。
「どういうキャッチャーがよいのでしょうか」と聞かれて
阿倍氏は「目立たないキャッチャーがいいんだろうね」と答えた。
それに対して「では、ピッチャーのところに行かないのがよいのでしょう」即答。
すごい受け答えだなー、この日一番感心させられた。
これみよがしにマウンドまで歩いていって
ピッチャーに指図しているのは俺、みたいな態度は何の役に立たない。
今のスワローズの正捕手:相川亮二の次、どころか
もしかしたら球界を代表する捕手になるかもしれない。


そんなこんなですぐ終わり。
最後にDeNAの桑原が猿のように野生なプレイがよく、とにかくギラギラしていると。
DeNAのノホホンとした他の若手とはひとり全然違う。
この選手もまた、気になった。


21時に終わって、まっすぐ帰ってくる。
前の方の席は本当に詳しい常連さんが座る。
全く詳しくない僕はいつも後ろの隅の方でこっそり聴く。