grey drop

雨の中、傘も差さずに歩く
この街はどこにも辿りつかない 入口も出口もない
無言の大人たちとすれ違う 誰もがひとりきり俯いて
僕はコートの襟を立てて 灰色の濁流に呑み込まれていく


見上げると空に赤く点滅するものがある
雲の隙間に隠れて、また現れる
雨の中、音もなく墜落する 光もなく熱もなく
その瞬間、過去と未来が錯綜する


雨通りでは雨の言葉を書き、雨の歌を聞く
その全てが水の中に溶けてゆく 轟く
傾いた灰色の世界 足元の流れに逆らう
僕は裸足になり、跪く 道路に全身を投げ出す