次回作

ここ1年取り組んでいた原稿ももう少ししたら世に出そうで、
ひと段落着いてようやく自分の作品を。


何となく見えてきた。こんな感じ。
書く時間を捻出しなければ。


東京で働いていた「僕」は40代を前にしてふと会社を辞め、
なんとはなしに旅に出る。あてもなく「北」へと向かう。
ローカル線の中で年老いた「男」と出会う。
「父」が生きていれば同じぐらいの年齢だ。
しわがれた、吸い込まれるような不思議な声をしている。
怒りや悲しみに満ちた目をしている。


彼は幼い「少女」を連れている。
しかしどうも、血のつながった関係ではないようだ。
僕があのとき結婚していたら
これぐらいの子どもが生まれていただろうか。


僕は誘われるがまま、彼らと行動を共にする。
海辺を歩き、何日か留まって、また気まぐれに列車に乗る。
廃校を見つけて住み着く。ある日「男」が外に出て旅を再開する。
その間、少しずつ共に旅する人たちが増えていく。
年齢も性別もバラバラ。
僕はその中のひとりの「女」と共に過ごす時間が増えていく。


「群れ」は年老いた「男」をリーダーとして、従う。それだけがルール。
言い争いや殴り合いも起きるし、派閥のような小集団も生まれる。
突然いなくなって、逃げたとも殺されたとも囁かれる。
僕は「女」と共に「少女」の世話をする。
そこから抜け出せなくなる。


青森からはフェリーに乗って海峡を渡る。
函館。小樽。さらにその先。
徐々に旅の行方は現実感を失って幻想を帯びてゆく。
季節はいつのまにか冬になっている。
そこがどこなのかもはや分からなくなった。
吹雪の中を黙々と歩く。凍え死ぬ者は置いていく。
僕は「女」と「少女」を守ろうとする。
しかし、些細な事件をきっかけに集団の中で孤立する。
年老いた「男」だけは僕を無言で受け入れてくれる。


「群れ」はいつのまにか、
どこの国ともいつの時代とも分からない人たちが増えている。
ものすごい数に膨れ上がっている。
言葉が直接通じない。それでも皆、
適度に距離を置いてひとつの方向に向かって歩き続ける。


岬に出る。これ以上北には向かえない。
年老いた「男」が祈りの言葉を囁くと、そこに無数の舟が現れる。
分かれて乗る。凍った海を音もなく渡っていく。
幾日が過ぎて雪で覆われた陸地が見えてくる。
どこなのだろうか。ロシア? いや、違う気がする。
名前やアドレスのある土地とは思えない。
振り返ると、まだ岸に着かない舟の大群が水平線の彼方まで続く。
最初の頃に一緒に旅をした人たちは見つからない。
思い出せるのは、先頭を行く年老いた「男」の姿だけ。


僕たちは今、「世界の果て」に向かっているのだろう。
しかしそれが、何のためなのか分からない。
さらに歩き続けた末に、そこで待っていたものは…