黒電話というもの

年末に青森の実家に帰る。
もう何年前からそうなのか覚えてないけど、
年に一度か二度しか帰らない息子の部屋は物置となる。
あちこち空いた本棚や箪笥が小物置き場となっていたりする。
世の中全般的に息子の部屋ってそういうものなのだろう。


そんな中にダイヤル式の黒電話が置かれている。
小学校、いや中学校の頃まで使っていただろうか。
改めて手に持ってみるとズッシリと重い。
手入れがよかったのでツヤツヤと光っている。
無駄なものがなくて、ある種の機能美を感じる。


1から始まって、0が一番下。
1を回すとジャッとあっというま。
0を回すとジャーーーッとゆっくり戻っていく。
この間合いの違いが面白いなと大人になった今、気づいた。
子供の頃はじれったかった。


10桁の電話番号をダイヤルすると数字ひとつひとつに長さがあって
その番号固有のプリミティブなリズムやメロディのようなものが生まれる。
0に始まって北海道は0が続き、九州は9か。
地域ごとにもその色合いは変わって来る。
チェッカーズの「涙のリクエスト」や小林明子の「恋に落ちて」の歌詞は
「ダイヤル」だからこそ味がある。


プッシュホンは全てが並列に並んでいるため
ダイヤルのような間合いがない。機能的でほんとデジタル。
その代わりにボタンごとに鳴る音色が変わる、というのがよくできてるな、と思う。
まさに電話番号がメロディとなる。
(実際には目の不自由な方の確認用に用意されたものだとしても)


どちらにせよ
0123456789という番号と
0123454321という番号と
0101010101という番号では
受け取るイメージがガラッと変わるだろう。


スマホ向けにダイヤル式で電話をかける、ある意味不便な、
しかしレトロなアプリがあったら意外と受けるんじゃないか。
どうだろうか。