『楢山節考』

以下、少しネタばれ。


先週の土日に今村昌平監督の『楢山節考』を観た。
1983年のカンヌでパルムドールを獲得している。


その貧しい村では70歳になったら男も女も
息子に背負われて山の奥深くに入ることになっている。
それはそこで一人生きていけ、ということを意味するのではなく
食べる物の何も無いところで一人死んでいけ、ということを意味する。


主人公の老婆は70歳を迎えるが、
なんとも元気で日々家のことを取り仕切っている。率先して働く。
山に入るということは健康状態とは何の関係もないんですね。
死にたくない、と駄々をこねることはなく、
それが村の掟であり、歴史であるから、
これでやっとお役に立てる、楢山神様も喜ぶと分別をもって振舞う。


このとき、前歯を臼や大きな石にぶつけてわざと折って吐き出す。
そして言う。
「ほら、もう歯も抜けてものも食えんようになった」
「山に連れて行っとくれ」
見ててゾッとした。たまらなく怖かった。
人間って生き物はそこまでするものなのか。
身をわきまえるってそういうことか。
不可解だけど、とてつもなく理にかなっていた。


母ももうすぐ70歳。
僕には背負って山を越えることはできない。


ちなみに、老婆役の坂本スミ子はまだ40代でこの役を演じ、
そのために前歯を削ったのだという。