伊香保合宿 その2

本来は10:34着の予定が30分ほど遅れて、11時過ぎとなる。
バスを下りる。まだ解け切れていない雪が茶色くなって道路の端に残っている。
先月の大雪によるものか。
バス停の地図を眺めていたら、今回の参加者の一人に声をかけられる。
少し前に到着したのだという。また後で会いましょうということでその場は別れる。
まずは「伊香保ビジターセンター」で観光地図の類をいくつかもらう。
伊香保温泉の入り口というか外れにあって、なんだかもったいない。
利用者は少なさそう。「伊香保温泉資料館」や「スケート資料室」もあったみたいだけど。


引き返し、伊香保温泉石段街へと歩いていく。坂道になる。
ちらほらと小さな、古びた、客の入ってなさそうな旅館が点在する。
予想していたよりもあっけらかんと隙間の多い、鄙びた温泉街だった。
どの辺から石段街だろうか? と適当に曲って、急な坂道を上っていく。
昔歓楽街だったのだろうか、いきなり「ストリップ銀映」の看板が。
こ、これまだ営業しているのだろうか?
昭和の終わりから放置されてきたかのような。
看板も建物も色褪せている。ギリギリ営業できているかどうか。
「お座敷出張・車送迎いたします」とある。
呼べばホテルに来てくれるのだろうか…


そのまま坂道を進んで適当に歩くうちに狭い路地裏へ。
これがまた流行らなくなって店を閉めたと思われる射的場に一杯飲み屋、
「女性半額 大衆料金で豪華な雰囲気を! ボトル\6,500」と書かれたスナックや
そういったところで働いていると思われる人たちの住む
ぼろいアパートの物干し竿にかかった洗濯物だとかで、
ああ、ほんと裏日本に迷い込んでしまったなあと侘しい気持ちで歩く。
人通りも全くない。


それが石段街に入ると急に観光客が増えて
土産物屋も伊香保温泉名物の射的場もグッと賑わっている。
石段を上っていく。与謝野晶子伊香保温泉の詩が刻まれている。
玩具系の土産物屋では万華鏡や糸電話が売られていた。
それを何軒かで見かけて、群馬の定番なのだろうかと思う。
上っていった先には伊香保神社。
地面がスケートリンクのようにツルツルの氷になって、親子が遊んでいた。
石段街を見下ろす。尾道もそうだけど、狭くて急な階段のある街は面白い。


さらに先まで進んでいくと露天風呂と飲泉所があるというので行ってみる。
坂を上り終えてゆるやかなアップダウンを繰り返す道になる。
この辺りからまた寂れだす。人通りがないわけでもないんだけど。
深い谷底に川が流れていて、
その斜面にへばりつくようにして家や旅館が建てられている。
1つの建物が4階・5階の高さになっている。
川をよく見ると川床が土っぽいオレンジ色に染まっている。
伊香保温泉は黄金の湯、お湯が茶色。
先ほど石段の間に見かけた足湯がそうだった。


右に左に折れ曲がった道を歩いていくとそのうちに建物が少なくなっていく。
そのうちのひとつが今にも壊れそうな平屋建てでガラス張りの戸。
何かの店らしいんだけど、暗くてひと気がない。
「さん志よ煎餅」と看板にあって、もしかしたらこれが山椒せんべいの店か。
よく見ると建物の右側の部屋はガラスの向こうに作業場のようなものが見える。
名物、うまいと書かれたのはネットでよく見かけたけど
今はもう店をたたんでしまったのか。ガラスのケースに何も並んでいない。


朱塗りの河鹿橋があって、その向かい側に
こじんまりとした雰囲気の「橋本ホテル」が建っていて
素朴なステンドグラスがどこか西欧風の山荘のようだった。
その奥に飲泉場。水飲み場があって水とお湯が筒から流れていた。
コップに汲んで飲んでみる。やはり鉄というか鉱物っぽい。
なんとも例えようがない味。


排出口から温泉が噴出し、湯気を立てているオレンジ色の小さな川に沿って
さらに上まで歩いていくと露天風呂の施設と休憩所、
明治時代にドイツからここ伊香保温泉に来て温泉療養の基礎を築いたベルツ博士の像、
そして直系1mぐらいの大きさの分厚いガラスを覗き込むと湧き出る源泉。
露天風呂は400円で男湯と女湯とが分かれている。
明日時間があったら入ってみようと思う。
休憩所はまあ何があるわけでもなく、伊香保や群馬の観光ポスターが貼られている。
萌え系のアニメかラノベとタイアップしたのや、
群馬観光大使の中山秀征と井森美幸がレトロ調に映っているものだとか。
なぜか週刊現代がたくさん置いてあって
中指を30秒間チェッカーに入れると100円で健康状態が分かるという機械が入り口にあった。
コンピューターが診断するという。
昔のゲームセンターや観光地にあったような。


また石段街に戻って足湯に入っていると
電話が掛かってきて、着いたけど合流しましょうと。
最初に下りたバス停まで片道10分かけて走って行った。