『グランド・ブダペスト・ホテル』

土曜の続き。
COREDO室町2の3階に上がると「TOHOシネマズ日本橋
雨の休日だからか若者たちでロビーのソファが埋まっている。


驚いたことに『グランド・ブダペスト・ホテル』は公開2日目にして
パンフレットが完売。
それほどの人気作なのか、それとも買わずにはいられない何かがあるのか。
18時半の回も満席だった。
http://www.foxmovies.jp/gbh/


00年台半ばの『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』や『ライフ・アクアティック』で知られる
鬼才ウェス・アンダーソン監督の最新作。
その後の『ダージリン急行』や『ムーンライズ・キングダム』は観ていない。
話題になっていた記憶もない。
それが『グランド・ブダペスト・ホテル』ではベルリン映画祭で審査員グランプリ
アメリカでもなんだったかの指標で全米No.1となり、
日本でも前評判が異様に高い。
ユリイカ』でもウェス・アンダーソン監督の特集が組まれていた。


中欧の架空の国。
寂れたリゾート地にひっそりと構える「グランド・ブダペスト・ホテル」を巡る二十世紀。
伝説のコンシェルジュと彼の弟子となった若きベルボーイが突如巻き込まれる大冒険。
謀略と脱獄。戦争とファシズム。19世紀的なダンディズムと21世紀的な錯綜する情報。


鬼才が突然、天才になってしまったかのような作品。
アメリカの若手(と言ってももはや40代半ば)の監督が
ヨーロッパの歴史と文化に真正面から向かい合って
アートとしてもエンターテイメントとしても
一流の作品に仕上げてしまったのが素晴らしい。
ポップな色彩とカメラワーク、情報量の多さと展開の突飛さ、アイデアの豊富さから
トマス・ピンチョンの架空の作品の完璧な映画化に思えた。
シンメトリックとアシンメトリックが鬩ぎ合う構図や構造、
国民的作家の著作「グランド・ブダペスト・ホテル」を読む若い女性がいて、
その中では作家が年老いた年老いたホテルオーナーの話を聞いていて、
ホテルオーナーは過去の出来事を思い返していて、という語り/物語の構造もいい。
そして何よりもあの音楽だけで泣けてくる。
ウェス・アンダーソン監督に限らず、
映画そのものがまだまだこれからも進化の余地がある。
そのことを十分すぎるほど確認できる作品だった。


レイフ・ファインズ、F・マーリー・エイブラハム、エイドリアン・ブロディ
ウィレム・デフォーハーヴェイ・カイテルジュード・ロウ
ビル・マーレイエドワード・ノートンティルダ・スウィントン
といった有名な役者たちの共演も豪華で楽しい。
アカデミー賞受賞の役者を何人も揃えたと豪語する映画が時々あるけど、
これを超えるものは当分現れないのではないか。


見終わって下の階の「88バル」で軽くつまみながら
柚子生搾りサワーなどを飲んで帰ってくる。
雨はやまず。日曜もまた、雨。