うどん県の旅 その4(9/6)

車でここも3分ほど。
今回のメインイベントのひとつ、イサム・ノグチ庭園美術館へ。
http://www.isamunoguchi.or.jp/


世界的な彫刻家イサム・ノグチがその晩年、庵治石に魅せられ、
アトリエと住居をここに構え、ニューヨークと往復しながら作品製作を進めた。
誕生日には必ずこの牟礼の住まいで過ごしていたという。


ビジターセンターで受付を済ませる。
篠山紀信が撮影した立派な画集が売られている。絵葉書やその他関連書籍など。
僕はイサム・ノグチが制作した子供向けの遊具を集めた小冊子と
住まいの内側を撮影したポストカードを1枚買う。
雨が本格的に降り出す。傘を借りる。虫除けスプレーも置いてあった。


15時からの回の見学。前半はアトリエと庭園、後半は住まいと裏山の庭園。
係の方の説明を最初の方に受けて、あとは自由に鑑賞する。
しかし、写真撮影と展示物に手で触れるのは不可。


庭園に無造作に大きな岩の塊が無造作に置かれている。
作品として完成せず、製作途中だった岩たち。滑らかに角を保った。
凡庸な灰色の石なく、ほとんどが黒ずんで赤や茶色に染まっている。
どこかに青が潜んでいる。独特なイサム・ノグチ色。
それぞれに肌理の細かさが違い、エネルギーの持つ方向性が違う。
そういった岩に窪みが設けられていたり、
円の形をまっすぐに保ったまま穴が開けられている。
その中に雨が振って水がたまっている。
僕はその中に指を浸してみた。


圧巻だったのは蔵の中に置かれた大作「エナジー・ヴォイド」
http://www.isamunoguchi.or.jp/gamen/museum.htm
大きな蔵を建てたから大きな作品を置いたのではなく、
大きな作品を作ったからそれを治めるための大きな蔵を作ったということ。
その照明もイサム・ノグチのいわゆる幽玄なオレンジの光を放つ「あかり」で。
凛として照らす。


イサム・ノグチの住まいは玄関から少しだけ覗ける。
こう言ったら身も蓋もないけどニューヨークのセレブ向け
超高級和風モデルルームのような。
イサム・ノグチ的なひんやりとして独特な手触りの丸みを持ったオブジェと
それを取り囲む落ち着いた、夜が雨のように降ってくる空間と。
生活感ゼロで本当にここに住んでいたのだろうか?
死後生々しいものは取り除いたんだろうけど。


裏の山を上って行く。
川の流れを小さな石を敷き詰めることで模倣した壮大な作品があった。
下流に行くと石が岩となりゴツゴツと荒々しく大きくなる。
冷蔵庫のように大きな卵型の石が突っ立ち、
その習作に用いられたような丸い石たちが積み上げられた一角もあった。
その横には四角いステージ。天気のいい日にはここで酒を飲んだという。


美術館と何らか関係があるのか、
敷地の横には同じようにゴツゴツとした岩を大小様々に集めて並べた
鉄骨の屋根と柱だけの大きな工房が建っていた。
中からは鉄の断ち切られる音がした。


イサム・ノグチ庭園美術館を出て、少し車に乗ってまた下りて「駒立岩」を見に行く。
http://www.city.takamatsu.kagawa.jp/7540.html
この辺りは源平合戦ゆかりの地。
近くに源平観光案内所がある。
小さな川の中に那須与一が的を射る前に祈りを捧げたという「祈り岩」があって、
その奥にその上に立って弓を放ったという「駒立岩」がある。
川の水門には舟の上の的を描いた絵が括りつけられている。


この辺りからことでん八栗駅まで「石あかりロード」となっている。
http://www.ishiakari-road.com/
2005年から毎年開催されて今年で10年目。
家々の軒先に今年の応募作品160個と過去の入賞作品が並べられている。
全国から応募があるのだろうか。
16時過ぎだったのでまだ石あかりは灯されていなかったけど、
夜になれば幻想的な風景となりきれいだろう。
応募作品のタイトルをエントリー順に5つ紹介すると
「光りあふれる猫」「化雪見−根−」「いらっしゃいませ猫」「かちむし」「星空のように」
モチーフとしては猫や蛙、地蔵が多かった。
ファンタジー系か抽象系にだいたい二分される。
過去の上位入賞作品「生家」「待ちわびて」辺りがよかったですね。
八栗駅に投票所があるんだけど
僕らの間では今年の作品の中では「チーズを見つけた!」がイチオシとなった。


パンフレットを見ると価格が載っていて、80,000円〜200,000円ぐらいまで。
制作費じゃないんですね。果たして売れるのだろうか?
いや、人気の作品は石工たちによりレプリカが作られ続けているのか。


子どもたちがつくったカラフルなオブジェ、
子どもたちの願い事を四角い石のプレートに書いたものを集めて吊り下げた柱、
石あかりとは関係なく「ONE PIECE」のフィギュアを
プラスチックのケースに包んで庭の木からぶら下げる家があった。
町全体がアートに向かって何かを生み出していく雰囲気。
「石の民俗資料館」「イサム・ノグチ庭園美術館」といったリソースと重なり合って
このようなイベントを開催するのはなかなか素敵だと思った。


雨も強くなってきてそろそろ切り上げようというムードの高まる中、
先生の熱意は途切れることなく。
合間合間に「州崎寺」「弓流し跡」「佐藤継信の墓」を見て回った。
州崎寺には源平合戦絵巻が石版に刻まれていた。
弓流し跡は解説の板にこうあった。
源平合戦の際、義経は勝に乗じて海中に打ち入って戦ううち、
 脇下にはさめていた弓を海中に落として、
 平家方の越中次郎兵衛森嗣に熊手をかけられ危うく海中に落ちかかりましたが、
 義経は太刀で熊手をあしらい左手のムチで弓をかき寄せあげたというところです。
 平家方に拾われて「源氏の大将ともあろう者がこんな弱い弓を使っているのか」
 と物笑いになるのをおそれたものだといわれております
                           高松市教育委委員会」
佐藤継信義経の身代わりとなって死んだ。
その墓よりも、同じ敷地内の義経の馬の墓のほうが大きかった。


先生おすすめのお菓子の店に入って、ここで先生とはお別れ。