眠りというもの

電車に乗っていてつり革広告にケンタウロスが描かれていたのを見る。
下半身が馬、上半身が人間という生きもので、弓矢を手にしている。
なんかふと、実在するとしてどうやって眠るのだろう、ということが気になった。


ベッドにゴロン、とするわけにはいかない。
カフカの藁の中に転がるのだろうか。
地面の上だと足を乙女のように横に折って腰を落とし
(しかしどこからどこまでが腰なのか)
そのまま上半身を投げ出した足とは反対側にそっと倒すのだろうか。


ここでハタと気付く。
そもそも馬という生きものがどうやって寝てるのかを知らない。
同じく牛はどうなのか?
だったら猿は? 人間と同じように寝床のようなものを用意するのだろうか。
しかし道具を簡単に使いこなせるわけではないので枕を頭の下に敷いたりはしない。
鮫は泳ぎながら寝ている、というのをどこかで読んだことがある。
渡り鳥もそうだったか。
一方で巣をつくる鳥は巣で眠るのか。
何にしてもその場で眠る。特別な状況を必要としない。


そう考えると現代の人間の、というか日本人の
掛け布団、敷布団、毛布、枕と用意して、というのは
どんなに眠りが生物学的に脆弱になっていることか。
そこにさらに湯たんぽだのエアコンだの、ベッドにはマットレス
人によってはアロマや音楽。
現代に限らず、少し前の世代も夏は蚊帳や蚊取り線香が必需品だった。
あれこれないと眠れないというのは退化しているのか。


忙しすぎて疲れきって、立ったままでも眠れる。
あれが実は本当の眠り、生物学的に自然な姿の眠りなのだろうかと思う。