箱根へ(後編)

12時過ぎ。通りを少し歩いてみる。
観光地にありがちなパワーストーンを売る店や
こんなの今時誰が買うんだろうというような土産物屋がいくつかあって、
あとは名物のワカサギの天ぷらを出す蕎麦屋ばかり。
こぎれいなイタリアンやカフェは行列。
蕎麦屋のひとつに入る。
「絹引うどん」というのが名物のようで、牛蒡の汁と胡麻を練りこんでいる。
見た目は細く、灰色っぽく、蕎麦に近い。
生姜天ぷらうどんを頼む。蕎麦とうどんの中間のようなものか。割とおいしかった。
妻の頼んだざるうどんの方がシャキシャキしていて合っていたか。


食べ終わって、ホテルへ。
電話をかけるとマイクロバスで迎えに来てくれる。
温泉街を抜けて、5分もしないで到着する。
本館は工事中で4月下旬に営業再開。
別館のレストランは営業していて、その奥の部屋で担当の方にお会いして打ち合わせをする。
衣装の持ち込みをするならばいくらかかるかとか、
翌日のランチは和食にするか洋食にするかとか、
フォトアルバムの電子データはオプションになるとかそういうこと。
ホテルに着いてみると静かで眺めもいい。
ここでいいと最初から決めていたのでそのまま申し込み手続きをする。
僕らの他にあと2組が結婚式の相談に来ていた。
当日の家族の移動に当たっては小田原からならばジャンボタクシーが利用できるという。
10人乗りで1万2,000円ほど。ああだったらそれにするかと。
しかし箱根湯本まで来てるかどうかはわからず。
バス・タクシー会社間の縄張り争いのようなものがあるらしい。


ホテルのマイクロバスに再度乗って箱根神社へ。
車の入り口が混んでいて何人も駐車係が立っていて右に左に誘導する。
元旦に降って三が日はこの辺り大雪だったこともあって
初詣客が今も続いているのではないかとホテルの方は言う。
昨年2月7日の大雪は例年にないもので、
客も従業員も3日間ホテルの中で足止めになったのだとか。
境内に入ると参拝客がずらーっと列をなしている。
儀式殿に入って中を見せてもらうが、初詣仕様が続いていてバタバタしている。
玉串奉奠」の手順を書いたポスターを見かけるが、難しそうで自分には無理。


ひと通り終わってレストランに戻って、アップルパイをどうぞと。
湖畔を見下ろす日当たりのいい席でごちそうになる。
薔薇の花びらを象って重ねられたアップルパイ。
そこに5色のフルーツソースで模様を描く。
オレンジのソースで地を広げてそこに木苺、ブルーベリーとヨーグルト、
ピスタチオ、カスタードのソースを重ねてカラフルな水玉を。
銀の棒でさっとひっかいてハート型のひとひらにする。神業…
熱々のパイの上に冷たいバニラアイスを乗せて食べる。
妻はいちごのパフェを。いちごにチョコレートアイスにナッツ。
たくさんの層になってそのてっぺんが飴でフタをされていて
スプーンで崩すとその上に乗っかっていたイチゴのソースが中にゆっくりと落ちていく。
こちらもまた絶品だった。


帰りもまた元箱根港まで送ってもらう。
バス乗り場に行くと待合室が行列になっている。
16時過ぎ、皆帰る時間か。
箱根湯本に戻るにはいくつか路線があって、
来た時と同じように国道1号線を下っていく箱根駅伝のルートはそれほど並んでなかったけど、
各駅停車で重体にも巻き込まれる。
もうひとつは急行で渋滞に巻き込まれないのがウリで、こちらが待合室に入りきらないぐらいに。
僕らは2本やり過ごしてようやく乗ることができた。
バスの中も通路に立って詰められるだけ詰める。
僕らは運良く座ることができた。
このルートはいったん元箱根町まで出て、あとは山の中をひたすら飛ばす。単調な風景が続く。
隣で妻は眠り落ちて、周りの席の若者たちもほとんどが寝ていた。
たくさん乗っているのにひっそりとして話し声もほとんど届かない。
バスが高速で走る音だけが聞こえた。


箱根湯本駅に到着する。
16:40のバスに乗って、17時過ぎには着いたか。あっという間だった。
予約していたロマンスカーは18:48としていたけどふたりとも疲れていたので
時間変更をして17:29のに乗って行く。
空は既に暗くなっている。
土産物屋で海鮮かまぼこと缶ビールを買って、車両の中へ。
朝の行きとは違って旧式でかなり古い。車内販売もワゴンで来る。
小田原だけではなく、秦野や本厚木、新百合ヶ丘などにも停車する。
池波正太郎の『男の作法』の続きを読んでいるうちに缶ビールで眠くなって、
そのうちに新宿に着いている。


帰りは山手線、目黒線大井町線と乗り継いで。
二子玉川のライズで食材を買って、早く帰ってきたからと鍋を作って食べた。
風呂に入って温まった。
次は温泉に入るぞ、と思いつつ。