2014年の新譜を振り返る

2月に入ってしまったけど、2014年を振り返る。
毎年その年の新譜でベスト10を挙げる。
購入リストを見てみるとそれなりに出てくるけど
昨年は聞いた瞬間「これだ!」「今年の No.1 だ!」と思うような作品は
残念ながら無かった。
いつもだとそういうのが3枚ぐらいは出てくるもんだけど。
1位の Joni Mitchell は順残たる新作というよりはコンピレーションだし。


では、こうなりました。
シンガーソングライター寄りの姿勢はここ数年変わらず。

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01. Joni Mitchell 「Love Has Many Faces」


自身の曲をモチーフにしたバレエ作品のための4枚組。
4幕ものということなのだろう。映像で觀てみたいですね。
リマスターはされているものの新しい曲はなく、
70年代の曲の多くはオーケストラとの共演による再演集『Travelogue』から。
年代順ではなく、バレエのテーマにそって並べられる。
膨大な曲の中から選んで並べ直しただけなのに
なぜこれほどまでに鮮烈な印象を残すのか。
Joni Mitchell の半世紀に渡る音楽活動を俯瞰したときの眺めの壮大さを感じる。
そしてその風景の詳細、ひとつひとつが美しい。

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02. ローザルクセンブルグ 「お蔵出し Vol.1」


突如発表されたローザのその名の通りお蔵出し音源。
デモ音源なのにやたらハイテンション。
音楽が生まれる瞬間ってこんななんだろうな。
ギターの玉城宏志が当時を振り返って解説を書いている。
Vol.2が初期ライヴ、vol.3はライヴ映像。

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03. Jenny Lewis 「The Voyager」


元 Rilo Kiley のシンガー、Jenny Lewis の6年ぶりのソロ。
(Rilo は2013年の未発表曲集もよかったですね)
一時音楽活動に悩んでいたようだけど、復帰できてよかった。
facebook を見てるとあちこちのステージに出演しているようで
日本にも来ないかな。2009年のサマソニは見逃した。
このアルバムでは BeckRyan Adams とも共演している。

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04. Elizabeth & The Catapult「Like It Never Happened」


2014年の収穫のひとつ。
タワレコで普通に前作が売られていたから日本でも知名度があるのかな。
年が明けてから Noisetrade で後追いで知ったんだけど
アメリカの女性シンガーソングライターとしては
Regina Spektor や上述の Jenny Lewis と並ぶだけのプレゼンスを持っていると思う。
才色兼備。カラフルでポップな曲を3人編成のバンドでコンパクトに演奏する。
『English Settlement』の頃の XTC が00年代、10年代に
ニューヨークでアップデートされたらこんな感じかな。

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05. The Stars 「No One Is Lost」


カナダの良心系ギターポップという印象があったんだけど
今作からなのかな、ディスコよりの音へ。
ふたりのローティーンの女の子がローラースケートリンクで向い合って踊っている
というジャケットのなにか突き抜ける雰囲気にその変化がよく表れている。
いい曲を書くというのは相変わらず。
ディスコというリズムが解き放つものがあったようで、雄大さをも感じる。

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06. Damien Rice 「My Favourite Faded Fantasy」


前作「9」から7年ぶり。名作「O」から11年。
世界最高峰、孤高のシンガーソングライター。
思いがけない成功に翻弄され、一時期音楽から遠ざかって世界中を旅していたという。
復活作はなんとプロデューサーがレッチリなどを手がけた Rick Rubin 。
羽の先で触れただけでも壊れそうだった世界が幽玄なものへと変化したように思う。

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07. Warpaint「Warpaint」


LAの女性4人組。2枚目。
ギター2人、ベースとドラムという編成からは想像ができない、浮遊感のある音。
寄せては返す波を聞いているうちに夜がふけてまた明けていくような。
レコーディングとライヴでは違うんでしょうね。

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08. Colleen Clark 「As the Crow Flies」


毎日新聞のアルバム評で見かけて、ふと気になった。
田家秀樹氏だったように思う。
シンガーソングライターとして活動しつつ、
普段はエンジニアを職業としているのだとか。
音の広がりがいいですね。
生成りのテーブルクロスの肌触りを思います。
デビュー作。

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09. Real Estate 「Atlas」


たまたまどこかでみかけたジャケがきれいで思わず買ってしまった。
ニュージャージーのインディー系ギターバンド。
名前の似ている Sunny Day Real Estate がエモなので
それっぽい音なのかと思って聞いたら全然違った。
むしろなぜか、The Stone Roses を思い浮かべた。
ファンクの要素を抜かして、
The Byrds 的フォーク・ロックの要素をましたような。

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10. (Soundtracks) 「バックコーラスの歌姫たち」


映画もよかったですね。
原題が素晴らしい。「20 Feet from Stardom」
ステージの中心で歌う歌手とバックコーラスとの距離。
手を伸ばせばすぐそこなのに、天と地ほどの差がある。
Rou Leed の名曲「Walking on the Wild Side」を
バックコーラスの視点から聞くと切なさがグッと増しますね。

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再発はやはり、Led Zeppelin がダントツでした。
Jimmy Page 自身がリマスタリング
音の存在感というより、ダイナミズムが変わったように感じました。
『Physical Graffiti』の発売が今月。
『Presence』が待ち遠しいです。