鳥籠

昨晩は「温室」の塚田さんのワークショップに参加した。
「いつかのものがたり 〜花を活けることと小説を書くこと〜」
若い小説家の方が自作の作品を読み、塚田さんがそれに合わせて花を活ける。
http://onshitsu.com/2015/03/04-210701.php


天井から吊り下げられたガラスの半球はキュッとしぼんだ底の方にコルクで栓がしてある。
そこに半分ほど透明な水が入っていて外側に茶色い枝垂れ柳が柔らかく放射状に包みこみ、
内側に木蓮の白、パンジーアネモネの濃淡異なる紫を挿す。
白く塗られた細い鉄線2本が球を形作るように交差する。
僕は鳥籠を思う。植物たちは突き破るように外に広がっている。


この花活けを元にどんな物語が思いつくか、何人か発表する。
僕は、例によって手癖だけでつくってしまったけど、こんなことを考えた。


何百年か何千年か先の未来。
透明なドームに覆われることで外界から閉ざされた人工的な楽園がある。
そこは美しく居心地のいいところだが、完全には自足できず、
絶えず「外」を感じさせている。
主人公の若い女はその「外」へと出て行くことを渇望する。
男は内側にとどまることを望む。
それまでいつも一緒にいたふたりに別れのときが来る。


「外」に出るということは限りなく危険を伴い、成功した者の話は聞いたことがない。
例え出られたとしてもそこでどうやって生きていくのか、誰にも見当がつかない。
一人で旅に出た女は最後、世界の果てで野生の植物に(生まれ)変わる。
男は時の果てに朽ち果てる。
また新しい植物たちがその空間を満たすようになる。


ワークショップが終わって21時過ぎ、僕は一人地下鉄に乗って帰った。