熊本へ その7

車に乗って阿蘇神社の前を過ぎて
阿蘇スカイライン・ミルクロード方面へ。
阿蘇五山を向かいにして小高い山の上を走る。
展望台で停めてもらう。
中岳から続く噴火によりカルデラの西・南側の広大なエリアがすっぽり
茶色っぽい灰色の砂煙に包み込まれていた。
まるで砂嵐に襲われたかのような。
なんだか不穏な広がり方をしている。
あの中では火山灰が降り続いているのだろう。


15時過ぎ。黒川温泉郷が近いので帰りに寄っていく。
人里離れた山奥。小さな川に沿って温泉宿が固まっている。
駐車場がいくつかあって、そのうちのひとつに停める。
小路を歩く。周辺のエリアは離れているので車の移動が必須だが、
中心エリアはコンパクトにまとまっていて
宿の間を車で移動することがない。落ち着きがある。
温泉宿の壁も屋根も橋も皆、建物が黒で統一されている。
うまくできてるな、と感心させられる。


1,300円の入湯手形を買うと3個所の温泉に入ることができる。
一カ所だけだと一律500円。
他の温泉街にありがちな飛びぬけて高級な旅館やマンモスサイズのホテルと
見るからに経営が傾いていて今にも廃業しそうな旅館が混在するのではなく
多少の差はあれ、どこも一定の基準を保ったつくりになっていて見劣りしない。
寂れたスナックなんかはなく飲食店もお土産屋もきれいで安心。
町おこしが相当うまくいっている。
聞けば歴史はそれほど古くはなく、今は三代目の世代であって
元々幼馴染だった若旦那たちが頑張っているのだという。
これはいつか泊まりに来たいなあ。


「心ゆくまで」という地元でつくられた芋焼酎を売っていた酒屋で
会社へのお土産のお菓子を買う。
その先にあった漬物屋にも入った。
T-1グランプリ」なるイベントで優勝したこともあるという。


旅館組合の案内所で薦められた「山みず木」という宿へ。
壁に貼ってあった大きなポスターには川沿いの露天風呂の写真が使われていた。
離れているので車で行く。
高級な宿で広い敷地には本館とは別に和風コテージが並んでいた。
それでも一律どの温泉も500円。
露天風呂は写真のように川のほとりにあって内風呂はふたつ、岩と檜。
源泉が90℃と熱く、珍しく露天風呂の方が熱い。
身体の底までホカホカした。


帰り道、疲れてウトウトする。
行きからずっと、廉価版のビートルズのCDが繰り返されている。
「Please Mr.Postman」「Let It Be」「Yesterday」「Girl」
「I Saw Her Standing There」「Roll Over Beethoven」「Matchbox」
「Don't Bother Me」「Ticket To Ride」「Yellow Submarine」「Michelle」
「Rock And Roll Music」「Get Back」「I Wanna Be Your Man」
「Do You Want To Know A Secret?」「I Feel Fine」
不思議な選曲だった。
最大公約数的なベストと初期ロックンロールカバーが同期しているような。


帰りに買った馬肉と家に着いてから改めて買いに行った「ひらい」のサラダちくわ、
昼の阿蘇「丸福」の手羽先の唐揚げなどで缶ビール。


夜、昨日のアウトレットモールで買ったものなど
段ボールに詰めて東京に送ろうとすると3箱になった。
午前0時に眠る。