リニューアルを手伝う

とある大手の生活雑貨の店がリニューアルする。
その目玉企画のひとつとして書籍の取り扱いを始めることになった。
6月にその選書の一部分を担当した。
2週間で300冊だったか。なかなかハードだった。
8月後半から実店舗での書棚づくりの手伝いを募集するというので
これはなかなかない機会だろうと
月末の土日に有休を足して行ってみることにした。


ここはとてつもなく大きな店舗なんだけど
その大半がパーティションで区切られて縮小営業となっていた。
その中に入って本棚に本を並べていく。
本棚のひとつひとつに番号がつけられていてどの本を入れるか既に指定されている。
場合によっては並び順も。
台車に積み上げられた段ボールにも棚番号を書いた紙が貼ってある。
事前にそこまでされているとあとは力仕事。ひたすら本を詰めていく。
エリアごとにリーダーがいて、不明点はその指示に従う。


日中はそういった作業。
夜になり、閉店時間を過ぎるとガラッと変わる。
「あ、そうか」と気づかされたのが
業者が什器を運んで来たり、溶接工事をしたり、ダクトの点検をするのは
お客さんがいるときにはできないことなんですね。
21時がオフィシャルな閉店時間だとして、
21時半ぐらいから各種様々な業者の方たちが入ってきてそれぞれの持ち場で作業を始める。
1階から3階までの吹き抜けの空間に本棚のオブジェを作るため
大型の昇降機に乗って本棚のパーツをクレーンで吊り下げる。
4mか5mもある大きな鉄骨を停止したエスカレータを上って運ぶ。
鉄板を切る大きな音があちこちでする。
そういった賑やかな音は悪くない。


僕らも、21時を過ぎて届いた面陳ツールという逆Vの字型の金属の板を
棚の上の方、手の届かないところにはめ込むというのをやった。
このとき、同じく棚にワイヤを張るために呼ばれた年配の施工業者の方たちが手伝ってくれたり。
交流が生まれると嬉しいもんです。


切ったり運んだりというローレベルなのか、
事前準備がなされたのちに特殊技術で壁に取り付けるのか。
それぞれの専門領域ごとに集まる人たちの雰囲気が変わる。
職人性の高い人たちにはやはりそういった空気がある。
話好きでないと務まらない仕事なのだということを僕は知った。
作業工程の空き時間ができたとき、
バイトや新入りに仕事の話をしている年かさの先輩という光景を何度か見かけた。


店の裏側を覗くことができたというのも興味深かった。
詳しいことを書くわけにはいけないのだけれど
休憩室に向かう通路がそのまま在庫の棚の山になっていたり。
売り場に出る最後のドアには「笑顔の点検をしましょう」と書かれていたり。


今回の作業でバイトの学生も何人か雇われていた。
全員が全員そうとも言いきれないんだろうけど、やっぱ受け身ですね。
夜中の1時を過ぎて大量の荷物が届いたとき、
じゃあ受け取りに行こうと率先して動くのは社員ばかり、
運んで来たらバイトの学生たちが暇そうにスマホをいじっていたのは驚いた。
一人一人に伝わるように手伝ってと言わないといけないらしい…


それでいて夜中3時を過ぎて
「少し休憩しない?」と声をかけると
自分たちは何時に入って何時に出て、その間休憩時間はこれだけと決まっているから
それ以上休むことはできないと。
ふーん、まじめなんだな。
それでいて与えられた仕事が終わると待ちに入ってスマホを眺めたり
並べた本をパラパラめくっていたりする。
何かやることはありませんかと聞きに行くということがない。
これからの日本は大丈夫か? と40過ぎたおっさんは思う。
その中にもひとり、率先して一緒に動いてくれる学生もいてとても助かった。


普段がデスクワークなので今回の肉体労働はとても楽しい。
いい気分転換になる。
具体的に目の前にモノが出来上がっていく、
遅れているのか進んでいるのか一目瞭然というのもはっきりしていていい。
何事も可視化して共有って大事だな、ということを改めて学んだ数日だった。