Shakespear's Sister 再訪

このところ、Shakespear's Sister の1992年のアルバム
『Hormonally Yours』をよく聴いている。
CDラックからたまたま出てきたものを聴き直したらなかなかよかった。


Bananarama のメンバーだったシボーン・ファーヘイが
セクシー・ユーロビート路線に反発して脱退、自身のグループを結成する。
ゴシックだけどロリータではない、
耽美的な大人のセクシーさを全面的に打ち出して人気となる。
音としてはオルタナティブなポップ・ロック。


Shakespears Sister 'Goodbye Cruel World'
https://www.youtube.com/watch?v=Kk1wrZdYgAc


このとき相方に選んだのがマーセラ・デトロイト
1970年代から本名マーシー・レヴィとして活動。
エリック・クラプトンのバックバンドに参加し、
『安息の地を求めて』にクレジットされている。
この頃クラプトンとも曲を共作しているという実力派。
ギターを初め楽器の演奏も得意で
Shakespear's Sister ではギターを抱えて
アルバムのジャケットやヴィデオクリップに登場するのがトレードマークになっていた。
(その経歴の長さゆえに『Hormonally Yours』リリースの頃は既に40歳)


当時のマーセラは長身で男装の麗人のよう。
そこに絡みつく Bananarama から脱皮したばかりのシボーン。
モデルのようなルックスのふたりが歌い、
ひとりは本気でギターを弾いていたのだから
当時相当異質なインパクトだったんじゃないか。
それで曲がポップなのだからヒットしないわけがない。
実際、「Stay」は本国イギリスで8週連続一位となった。


Shakespears Sister 'Stay' Live TOTP 1992
https://www.youtube.com/watch?v=Qc4r5WGEQKY


この曲を書いてメインで歌ったのがマーセラ・デトロイト
1枚目ではあくまでバックアップ・シンガー。
(『Sacred Heart』のジャケットがシボーンだけなのを見ても明らか)
シボーヌの後ろでギターを弾く人、ぐらいの引き立て役だったのが
2枚目では前面に出るようになり、作詞作曲した「Stay」が大ヒット。
ここで自信のついたマーセラは独立してソロへ。
シボーンだけでつくられた3枚目はお蔵入りしてしまった。
(『#3』というタイトルでその後2005年に日の目を見た)
このふたりでもう1枚つくってほしかった。


でもまあ、そうなるよなー。
マーセラ・デトロイトの最初のソロ『Jewel』ではエルトン・ジョンと共演。
セルフ・プロデュース(正確には共同プロデュース)の『Feeler』が
七色の声を活かし、90年代の女性シンガーソングライターのアルバムとしてなかなかいい。
その後以前ほどの華々しい活動はなく、
本名マーシー・レヴィに戻ってブルースバンドなど地味に活動を続けている。


そうそう。
Shakespear's Sister という名前を聞いて
往年の UK 80's ファンならピンと来るのが、The Smiths のシングル。
『Meat Is Murder』の頃。やはりそこに由来するそうですね。
そもそもはヴァージニア・ウルフのエッセイ集
『自分ひとりの部屋』の中に収録された
シェイクスピアに妹がいたら、当時文学を書くことを許されたか」
という内容の講演に寄るもの。
この The Smithsヴァージニア・ウルフの流れに
シボーンの新しいグループにかける意気込みの強さが感じられた。
私はもはやただの消費財ではないんだよと。


最後にもう一曲。
優れたシンガーソングライターはカバーの名手でもあり。
意外なところでボブ・マーリーのカバー。
80年代のエレポップと90年代のオルタナティブをつなぐ音は案外こういうのかもしれない。
ライブではマーク・ボランの曲をよくやっていたようだ。


"Could You Be Loved" by Shakespears Sister
https://www.youtube.com/watch?v=EyeuuTsPZHc

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付記。


2012年に『Sacred heart』『Hormonally Yours』
それぞれリマスターされたデラックス・エディションが発売されるはずが
その後とんと音沙汰がない。残念。


演奏力が高いのでライヴアルバムがないかと探すとYoutube にて
「オフィシャルサイトでライヴアルバムのDVDとCDのボックスセットを販売する」
とあって、お!? と思ったが、そのサイトが動作の不安定な残念な状態になっている。
http://www.shakespearssister.co.uk/


『Live 1992』というのがダウンロード・オンリーで出てたみたいだけど
やはり上記のサイトから。今は入手不可。
この中の「Hot Love」(マーク・ボランのカバー)「Catwoman」「Dirty Mind」の3曲が
『Hormonally Yours』からカットされたシングル「My 16th Apology」に収録されている。


他に1枚目『Sacred heart』からの「You're History」に
同じく1枚目からの「Heroine」「Dirty Mind」が。
サンクトペテルブルクで地元のミュージシャンとのセッション。
日本で入手可能なライヴ音源はこれぐらいかな。
ちなみにこのジャケット、裸のふたりが腰から上、背を向けて写っているというもの。
マーセラはギターのフレットを押さえている。それがゾクッとするぐらい官能的。
https://en.wikipedia.org/wiki/You%27re_History_(song)


『Live 1992』は1993年に
ブートレッグで『Back in Your Own World』というタイトルで発売されたこともあるらしい。
個人的にはこれを探してみたい。
他に『The Other Side... Demos and Rarities』というシリーズが。
これも上記サイトのみだったらしい。