入院二日目

昨日の続き。
その後ずっと「45 ザKLF伝」を読んだ。
200ページ、全体の2/3まで来て肝心の The KLF のことはほとんど語られない。
わざとすりぬけるようにその前後のことばかり書いている。
しかし、Echo & the Buunymen と The Teardrop Exlodes のマネージャーだったこと、
The KLF 後に作った曲がユーゴ内戦に与えた意味など興味深いエピソードばかりだった。


そのうちに日が暮れてくる。
遠くビルの合間にスカイツリーが見える。
小児病棟が見えると妻が指差す。


病室なのでドアは開けっ放しで廊下の声が聞こえてくる。
まだ若い患者たち、お年寄りの患者たち、看護師たち、
インターンの医者たち、病院の職員、付き添いや面会の人たち。
案外笑っている声が多い。


18時になって夕食。次は金曜の昼にお粥。最後の食事。
鮭のチーズ焼き、五目なます、ホウレンソウ胡麻和え。
どれもおいしい。しかし量が少なめなのでペロリ…
明後日の昼まで持つだろうか。
明日からの一週間の献立が配られ、原則二種類から選択可能。
これが和食と洋食なのか肉と魚なのかよくわからず。
1回ごとに選べるようで、それぞれ
「この日はハッシュドビーフにしよう」
「この日は鯛の梅肉焼きにしよう」
と選んでいった。


テレビのカードを買ったので大相撲を見る。
つけたら結びの一番だった。
横綱鶴竜のみ。無敗はもはや一人のみ。
妻が帰るので下まで見送った。


『45 ザKLF伝』に戻る。
夜勤の当直の看護師の方が顔を出しに来る。
点滴は明日の朝になったというので
9時の入院手続きの後にしたいと伝えた。


20時半、入浴。30分だけど浴槽にお湯を溜めることもできた。
あがってきて綿棒でお臍の中をきれいにする。
開腹で大きく開けるとはいえ臍の周りまで到達することはないが
念のためお臍は綿棒で清潔にしてくれと言われている。
盲腸の手術の時は下の毛を剃るというのを小さい頃よく聞かされたものだが、
昔とは違うのかそれとも切るところによって違うのか、今回それはないようだ。


風呂から出て一息ついて読むものを変える。
『短編ベストコレクション 現代の小説2015』
浅田次郎「流離人
飛鳥井千砂「夜の小人」
どちらも素晴らしい物語だった。
21時と言われていた下剤を飲む。
22時消灯。
23時前に眠くなって布団の中へ。


廊下を看護師のワゴンが行き交う音で目が覚める。
5時半。布団の中でうつらうつらする。
明日からはしばらく無理かとうつ伏せになったり右を下にして眠る。
6時を過ぎて担当の看護師の方が血圧と体温を測りに来る。
上が120で下が59。昨日とさほど変わらず。
体温は35.9℃で平熱へ。昨日は37.1℃と熱があった。
肌寒かったからか。妻に上に羽織るシャツを持ってきてもらうよう頼む。


起き上がってNHKのニュースを見る。
ラグビースコットランドに敗れる。
ヤクルトは3連勝。山田が盗塁を増やす。
福島県楢葉町警戒区域解除が気になる。


昨晩0時から食事が、6時から水がストップ。
今更ながら腹を大きく開けるというのが怖くなってくる。
手術そのものは怖くないが。
担当医の札を見ると先日の外来で診断された方、
この人なら信頼できると思った方ではなく、別の方となるようだ。
執刀は他の人となると少し不安になる。


『45 ザKLF伝』の続きへ。手術までに読み終えることができるだろうか。
7時を過ぎて先日の外来の先生が手術着を着て挨拶に来る。
「今日はよろしくお願いします」と。
その後腎センター長と思われる年配の方が若い医者を従えて。
この若い医者の名札に上記の札の名前があったのでこの病棟での担当ということかと知る。
やはり執刀医は先日の外来の先生だ。ほっとする。


8時になって食事の時間。スピーカーから放送が聞こえる。
しかし今回僕の分はない。
ベッドから出て立ち上がってシェーバーで髭を剃る。


点滴の針だけ先に左腕に指す。
9時の入院手続きの後でとお願いしていたけどうまく引き継げていないらしい。
まあいいか。
針を刺して注射器につながったチューブを差し込むと赤い血液が少し逆流する。
注射器が抜かれる。食塩水だったのだろうか。
なんか少しぼんやりする。
管を固定するシールがとても進化していて無駄がない。
いくつかのパーツに分かれたものがコンパクトにまとっている。
チューブを巻いてネットで固定する。
9時に到着する予定だった妻があれこれ立て込んでて10時頃になると連絡がある。
薬剤師の方が来る。手術後明日の昼までは点滴。その後痛み止めと胃薬を飲む。
必要に応じて昨晩同様プルゼニド錠12mgを。手術後便秘になる人が多いらしい。
10時前に妻が9階に着いて頼んでおいたシャツ、プラスチックのコップ、ストローを受け取る。
昨晩着替えたトランクスやTシャツをコンビニの袋に入れて渡す。
妻に入院手続きに行ってもらう。


その間点滴を受ける。
「ソリューゲンF注」と書いてある。調べると
「循環血液量減少時及び組織間液減少時における
 細胞外液の補給・細胞外液の補正、代謝性アシドーシスの補正。」
とある。何のことかよくわからず。
ナースステーションに陽気な医者が入ってて物まねをしたり歌ったりしている。
『45 ザKLF伝』を読み終える。


この後、12時か13時に迎えが来て手術着に着替えて
足にはエコノミー症候群を抑えるためのネットを履いて
エレベーターに乗って2階の手術室へ。
その間妻は9階の病室で待つことになる。