にせんねんもんだい『#N/A』

にせんねんもんだいの新作『#N/A』を聴いた。


ギター、ベース、ドラムの3ピース。ヴォーカル無しのインスト。
単純なフレーズの反復とズレが無機的なダンスビートを生む。
体温が低いようでいて、昔のライブを聞くと結構アツい。
元々ミニマルな方向性にあったけど、
近年どんどん進んでいって
前回のアルバム『N』では曲名が A / B-1 / B-2 の3曲。
今回は遂に曲タイトルもアルバムタイトルもなくなった。
(だから『#N/A』)
iTunes に取り込もうとしたら、本当に、なしとして表示されなかった。
行くところまで行った。


曲を聴いてもギターはキリキリと最小限のノイズを出して
ループさせてエフェクトをかけているだけ。
フレーズらしいフレーズは一切弾いてない。
もしかしてレコーディングでは弦を1本しか使ってないんじゃないか。
ベースとドラムもかろうじてリズムの構成要素となる音を一定の間隔で放つだけ。


P.I.L.『Flowers of Romance』の子どもや孫とでも言うべきジャンルがある。
この『#N/A』はその最新系にして、辿り着いた極北の1つと言える。
『Flowers of Romance』にあった「呪詛」といった感情的な要素を一切廃し、
ミニマルな音をどこまで研ぎ澄ませるか。
文脈もストーリーもない。かろうじてゆるやかな起伏の変化があるだけ。
つまるところありふれた「意味」というものがない。
そこにはもはや「音」そのものしかない。


この先、どこに進めるのか。
もっともっと突き進むならば、まずはリズムが失われ、次に音の連なりが。
無音というものすらなくなるのか。
虚無を感じさせる音の位相だけがそこにある。
あるいはそろそろ反転してロックのダイナミズムを求めていくか。
後者は後者で面白くなりそうな気がする。