わちさんぺいという方

訳あって漫画を調べることになった。
指定された漫画家の著作リストを作成する。
戦前から21世紀まで幅広く扱う中で
ふと気になったのが「わちさんぺい」という方。


ジャンルでいえば児童向けのギャグマンガ
代表作は長嶋茂雄に憧れる野球少年が主人公の『ナガシマくん』や
同様にボクシングの『豆パンチ』など。
画像を検索してみると、貧しいけど明るく元気に過ごす少年少女を通して
戦後の昭和が描かれているようだ。
http://www.mangashop.jp/bin/searchprod?key=%A4%EF%A4%C1%A4%B5%A4%F3%A4%DA%A4%A4&loc=frm
(立ち読みのPDFあり)


戦前は軍隊で過ごし、戦後漫画家となる。
1960年前後をピークとして、少年向け雑誌にも連載をたくさん抱える売れっ子に。
並行して集英社から出ていた『なぜなぜ学習漫画文庫』というシリーズの
理科編や社会科編も手掛けていた。
今は上記2作品以外の漫画の入手はまとまったものとしては難しいようだ。
一方でヤフオクまんだらけを覗くと
当時の少年向け漫画雑誌の別冊付録が割とたくさん見つかる。


ああ、こういうのあったなあ! と懐かしい気持ちになった。
親戚の家に行ったときにたまたま保存状態のいい
20年近く前の漫画の単行本や付録を見つけると確かにこんな感じだった。
賑やかで素朴で、朗らか。
ギャグマンガってこういうものだった。
(担当したひとつ前がアイウエオ順で吉田戦車だったのでなおさらしみじみした)


ギャグに限定せず、児童向けの括りの中で
歴史ものや社会派的な作品を手掛けていたようだ。
詳しく取り上げている方のブログがあった。
http://toppycappy.cocolog-nifty.com/muukun/2013/08/post-9a21.html


今はこういう少年少女向けの雑誌って
小学館の『小学○年生』しかないのだろうか?
僕が育った1980年代には既に淘汰されていたように思う。
その中で、こういった子供向け雑誌の中でしか出会わないような漫画家って確かにいた。
幼い頃にはすぐ近くの存在だったのに、大人になっていくどこかで忘れてしまう。


童話ではなく、大人向けのを対象年齢を下げて簡単にしたような漫画。
斬新な内容ではなく、流行遅れになるギリギリ踏みとどまっているような漫画。
埋め草と呼ばれるのがぴったりの。
もはやその名前を思い出すことはなく、
ボロボロになった付録はもう何十年も前に捨てられてしまった。
ヤフオクでプレミアついてるのもなんかよくわかる。


そういった漫画家たちも使い捨てで、
その後も書き続けられた人たちは少ないのだろうと思う。
子供向けに漫画を書くのって人生のうち数年しかできないことなのかもしれない。
波長がそこに合わせられる時期というか。


わちさんぺいもブームの後は釣り仙人と称して
好きな釣りをしながら漫画やエッセイを書いていたようだ。