映画音楽を聴く、補講

「Terrain Vague vol.27 『映画音楽を聞く 映画+音楽編』」
いよいよ明後日金曜18日の開催。


facebook のイベントページに書いた補足のあれこれをこちらにも。
前回同様「残念ながら外した曲」の紹介。
https://www.facebook.com/events/991243300942751/

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今回は「その映画のために書かれた曲」ではなく、
「既成だけどその映画にぴったり合った曲」がテーマなのですが、
真っ先に思い浮かんだのが『地獄の黙示録』とその中で何度も
大事な場面で流れていた The Doors 「The End」
https://www.youtube.com/watch?v=CIrvSJwwJUE


青森で鬱屈した日々を送ってロックや映画以外に救いのなかった10代。
他にこの世界との接点はない、外界とつながる手段がない、というような。
そんな高校時代に出会って以来、
個人的にロック史上最高の名曲は今でもこれだと思っています。
ここまで虚無に魅入られた曲はないでしょう。
歌詞の中で言及される「青いバス」を僕は今も心のどこかで待ち続けています。


この映画でもっと的確な「引用」がなされたのは
ワーグナーの「ワルキューレの騎行」でしょう。
https://www.youtube.com/watch?v=TqtehtSB0LI


一度映画を観てしまうと
ベトナムの森を焼き払うナパーム弾を思い浮べずにこの曲は聞けません。
戦場に死をもたらす女神たち「ワルキューレ」を
米軍のヘリコプターに見立てたコッポラ監督の天才的な発想に感服します。


そんなわけで「ワルキューレの騎行」が好きでいろいろ聞いたのですが、
一番ぞっとしたのがフルトヴェングラー指揮のものでした。
ここまで聖なるものと禍々しいものとが混然一体となった音楽はないです。
https://www.youtube.com/watch?v=5-M-djLDRRo

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引き続き、クラシック。
今回いろいろと絞っていったらクラシックはうまく収まらなくなったんですね。


地獄の黙示録』のフランシス・コッポラ監督と並んで
天才的な選曲センスを発揮したのがスタンリー・キューブリック
2001年宇宙の旅』の「美しき青きドナウ」とその宇宙空間の映像。
宇宙空間を進む乗り物があったら実際にはかなりのスピードなんでしょうけど、
こんなふうにゆったりと優雅なテンポを刻むものなのではないか。
そう思わせました。
https://www.youtube.com/watch?v=UqOOZux5sPE


そしてリヒャルト・シュトラウスによる「ツァラトゥストラはかく語りき
ニーチェの著作にインスピレーションを得たとされます。
2001年宇宙の旅』では猿がモノリスによって進化する場面で使われていましたが、
猿が骨という「道具」を知っていろんなものを叩き壊しまくる場面、
得体のしれない高揚感があります。
放り投げた骨が宇宙船になって、
その間の人類の歴史は省略という大胆さにも驚かされました。
https://www.youtube.com/watch?v=ypEaGQb6dJk


ちなみに、「美しく青きドナウ」はヨハン・シュトラウス2世なのですが、
この2人に特に関係はないとのこと。
僕は勝手に親子だと思い込んでいました。


ツァラトゥストラはかく語りき」は
ポール・トーマス・アンダーソン監督の『マグノリア』での
トム・クルーズ扮するうさんくさいセクシャルな自己啓発セミナーのカリスマ講師が
最初に登場する場面でも効果的に使われていました。
同じ曲でも全く印象が変わります。
https://www.youtube.com/watch?v=bbanWHx5AFQ