稲葉俊郎という方

昨晩は塚田さんの「TERRAIN VAGUE」で稲葉俊郎という医者の方のお話を聞いた。
人体、医療、植物、日本、技芸とをつなぐ。
ミモフタモナイ言い方になってしまうけど
東大医学部卒で東大病院勤務ということでとても頭のよい方だった。
いとも簡単に様々な知を、情報を結んでいく。
循環器内科で心臓カテーテルが専門。山岳医療も手がけると話されていた。
「未来医療研究会」を主催し、東京オリンピックまでに形にしたいと。
年齢は僕よりも5つほど下。30代後半。今が一番脂がのっている頃か。


冒頭で「こころ」とは何か? という観点から
東洋医学と西洋医学の違いについて説明がなされた。
西洋医学は言語を基本に置く。
論理と言い換えてもいいかもしれない。0か1か。
だから意識と無意識は分断可能であるし、自己と自然も分断可能となる。
その分客観的であってそこからは自然科学が生まれる。
一方で東洋医学は身体的であって瞑想であるとか呼吸法と不可分。
表層意識から深層意識まではグラデーションをなし、自己と自然も分断できない。


あるいは。
西洋医学は「病」を定義し、治すのは他者。身体は闘いの場。
東洋医学は「健康」を定義し、自己治癒を基本とする。身体は調和の場。
こういったお話をさらっと伺うだけで
この方の中には相当な量の書物、古今東西の研究が出入りしているのだなと感じる。
曰く、生命とは最近や原生生物といった単純なものから
動物・ヒトまでがマッピングされたマンダラのようなものであると。
RNAの中にその進化の歴史が織り込まれている。


そこから専門の臓器、循環器の話へ。
臓器には植物性の臓器と動物性の臓器がある。
前者は呼吸系、循環系、輩出系。自然と共に自ら生命を形作る。
栄養の摂取と生殖。植物ゆえに胃の中に入った後、
消化・吸収って僕らは意識することがない。
後者は自然と闘うための感覚器官。それらをつなぶ神経。
受容系の感覚、伝達系の神経、実施系の運動。


なによりもびっくりして、なるほどと思ったのが、
資料をそのまま引用すると(並べ替えています)
脊椎動物では、「くだ」としての植物性臓器を覆うように動物性臓器がかぶさる」
「自然・宇宙と共振する植物性臓器はミクロコスモスとして人体の中に閉じ込められ、
 反自然の性質を持つ動物性臓器が表面に出る」
「人体は二重の「くだ」構造が螺旋にねじれたもの」
「自然と調和的な植物性意識と、反自然的な動物性意識のあわいの存在となる」


身体の進化の歴史ということで腸管を例に説明された。
単純な生物では口から肛門まで一本の管であったものが
魚類以後は顎が生まれることで何を食べるのか選別できるようになり、
胃が生まれることで食べるものを選別できるようになった。
両生類からは鰓が肺へ。鰓は直接呼吸して肺は別途呼吸器官を必要とする。
鰓の名残は耳の穴として残っている。
喉、肺、胃、小腸、大腸。これらの管はどんどん複雑になっていった。
このとき、管をねじることでその形が生まれた。


後半はここから日本へ、日本の技芸へ。
医療と日本的な「道」というもの。
これからあと4回、夏・秋・冬と各論に入っていくという。
http://terrainvague2015.blogspot.jp/2016/04/terrain-vaguevol29.html